はじめにお断りしておきますが、今回お話する事はあくまでも私の個人的な見解であり、厚生労働省が認可し歯科医師会や各種学会が安全として採用している治療方法を否定するものでは、一切ありません。
「保険でも結構奥歯まで白い被せに出来るようになりましたよ。お安く出来ますので、今回の虫歯の治療は銀の被せではなく保険で白い被せにしませんか?」と担当の歯科医師から説明された事はありませんか?
それは保険のCAD/CAM冠という、かなりの強度を持ったプラスチックのブロックを削り出して作った被せ(クラウン)の事です。
【注意】今回お話する保険のCAD/CAM冠は被せ(キャップ形態のもの)であって、保険で出来る白い詰め物(コンポジットレジン充填)とは全く異なる治療方法です。混同しないようにして下さい。
この保険のCAD/CAM冠ですが、英保歯科では過去に数本程度の治療経験がありますが、その数回の使用経験から思うところがあって最近は全く使っておりません。
最近は「ジルコニアの被せか金の被せか、あるいは保険の銀(色)の被せ」から選択する事がほとんどで、保険のCAD/CAM冠は、もう長くは持ちそうにない程に傷んでしまっている歯で、かつ目につく部位にある歯に対して「短期間の最後の『死に化粧』として使う」事が稀にある程度です。
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最近、「他院でやってもらった保険のCAD/CAM冠が脱離した。」との事で来院されたお客様がおられましたので、この症例を通して私が思う保険のCAD/CAM冠の長所と短所についてお話したいと思います。
この中央の保険のCAD/CAM冠が外れちゃているそうです。指でそっと引っ張ってみると・・・。
保険のCAD/CAM冠の長所:
1)値段が安い
保険のCAD/CAM冠の短所:
1)高強度といっても、しょせんプラスチックなので咬合力(ものを食べる力)がかかる度に変形・復位を繰り返し、界面の接着が少しずつ破壊される。完全に外れてしまうまで、クラウンと歯の間が開いたり閉じたりしてポンプのようになり、食べカスや虫歯菌や歯周病菌が内部に侵入する。場合によっては内部を真っ黒な虫歯してしまい、その歯の寿命を非常に短くしたり、しばしばターミネートする。
2)歯を削る量がとても多い。歯を削る量は (レジン充填<)金や銀(色)の金属の被せ<ジルコニアクラウン<eMAXなどのガラスセラミックスによる被せ<保険のCAD/CAM冠となる。理由は(プラスチックなので)割れてしまったり、変形による早期の脱離を避けようとしてクラウンの厚みを厚くする必要があり、結果的に歯を細く削ってしまうようになる。歯の寿命は残存歯質量に比例するので、歯を細く小さく削ってしまうと、場合によってはその歯の寿命を非常に短くしたり、しばしばターミネートする。
早期に外れるとトラブルの原因になるので歯科業界は少しでも長い間外れないように接着剤などを改良する努力をしているが、しょせんプラスチックの歯なので何をやっても上記の現象は避けられない。個人的には「むしろ早期に外れてくれた方が歯のためにはマシ」とさえ思えてくる。
他院の担当の先生が責任を持って説明し、こちらのお客様もその時に自己責任でお選びになった上で、お二人で施行された保険のCAD/CAM冠の治療です。(この方と私との信頼関係が確立されていない現時点で)私が保険のCAD/CAM冠についてとやかく言っても「自由診療を勧めてくる、儲け主義の歯医者!?」と誤解される恐れがあります。何年か予防歯科で当院に通院して下さった暁には、私を100%信じて貰えるようになるかも知れません。その時を待ちたいと思います。
保険のCAD/CAM冠も自由診療のジルコニアクラウンも、どちらも白い歯ではある訳ですが、あなたはとどちらに Value for Money を感じますか?
私なら同じ白い歯でも100%自由診療のジルコニアクラウンの方に感じますね。
おっと、その前に「予防して自分の歯を虫歯や歯周病にしない努力を選択します。」と言うべきですね。そうすればタダで最高のものを手にし続ける事ができるのですから。