「将来に希望を持てない今の日本」を象徴するような痛ましい事件が起きました。
【東大前3人刺傷】17歳容疑者少年を駆り立てたエリートの重圧「生徒会選挙に立候補、成績上位で期待も」
「医者を目指していて、東大に入ろうと思っていたが、1年前から成績が落ちて悩んでいた」「勉強がうまくいかなくて、事件を起こして死のうと思った」と供述しているそうです。
日本の理系の成績優秀な子達が、東大や京大の工学系や化学系ではなく、医学部ばかりを目指しているのですが、もはや異常事態だと感じます。
私は大学病院に在籍していた数年の間、口腔外科医として入院病棟で働いていました。その時は普通の医師と全く同じような仕事をしていましたので多少は「医者と言う仕事」について解るつもりです。
岡山大学医学部卒の友人、軽音楽部で一緒だった Y 先生、出張病院の医局で隣席だった内科医の K 先生の二人は若くして自殺してしまいました。医者とはそのような「大変な」仕事なんですよ。
我が家にはテレビがありませんが、医師を主役にしたドラマに人気があると聞きます。それを見て医者に良いイメージばかりを膨らませているのではないでしょうか?
有名大学の工学部等を卒業し、AIなどの情報系に関わるエンジニアになって、一流企業の手厚い福利厚生に守られ、何年間の海外駐在を経験できたりしながら、年収1000万円ほどの報酬がもらえる能力を維持する努力を継続し、65歳で退職金を貰ってリタイアした後は個人の会社を立ち上げてフリーランスで社会貢献し続ける事ができたとしたら、それでも色々あるとは思いますが、きっとその方が自殺する可能性は低いと思います。
日本社会の問題点は、理系の技術を持った方の報酬が異常に低い事だと思います。専門の知識や技能を持った優秀な日本人が家族の為にやむを得ず韓国や中国に渡り、2-3年で使い捨てにされて失意のうちに帰国したら非国民呼ばわりされるのですから、気の毒としか言いようがありません。
社会や人生という大海原に、たった一人で、自分の実力だけで漕ぎ出す勇気と覚悟がある人間は医学部に行っても良いと思いますが、少しでも「(社会や仲間から)守られたい」と思っている部分があるなら、有名大学に行って大手企業に勤めた方が良いと思います。きっとその方が楽は楽です。「人生の荒波に抗う」というエキサイティングな瞬間は少ないかも知れませんが。
私は生まれ変わっても又歯医者になりたいと思っています。