episode5:灼熱の夏

自分の店の経営規模を拡大して売り上げを上げる。マセラッティやフェラーリに乗って自分が成功者である事を見せつける。岡山大学の同級生や後輩の何人かがそんな風になってきていました。学生時代は歯医者の息子である私が一番リッチだったのですが、すっかり逆転されてしまいました。

これにしよう!

「遅ればせながら、自分も頑張ってみるかな?」そんな軽い気持ちで英保歯科の経営規模を大きくする事に着手しました。

診療台(チェアー)を7台に増やして、岡山大学の後輩の歯科医師2名に就職してもらい、受付のスタッフも大幅に増員しました。

その結果、売り上げは約2倍になり、もうすぐ医療法人化しなくてはという規模にまで大きくする事ができました。凄いでしょ?尊敬してくれます?

でも、そんな状況になっていても、私は全然ハッピーではありませんでした。

売り上げ2倍にはなりましたが、固定費は3倍、そしてストレスは4倍になっており、自分でも「もう限界かも」と思い始めていたある日の事です。昔からのお客様が「あちらの若い先生には失礼なのですが、私は英保先生に治療してもらいたいと思ってずっとここに来ているんですよ。」とおっしゃいました。また、他のお客様は「今の英保歯科は英保先生らしい雰囲気ではないと思います。」とも。

3年間ほど規模拡大に振っていた私ですが、その言葉を聞いてからは退職者が出ても増員せずに自然減に任せて、元の英保歯科のスタイルに収束させる事にしたのです。(フェラーリは諦める事にしました。)煩悩を持ったせいで自分の身に降りかかった色々な事項があります。それらの後始末に数年かかりましたが、合計約10年で英保歯科の夏は無事終わりました。

燃え盛るような夏はとても魅力的に見えますが、私には暑すぎたようです。

それに続く10年(現在進行形)は実りと収穫の秋となりました。経営的には収穫の秋ではありませんが、私の歯科医師人生に於いては最高にハッピーな10年となっております。