「歯科一般」カテゴリーアーカイブ

「その場しのぎ」の繰り返しに見える

痛くなった時にだけ歯医者に行って、神経を取ってもらったり、歯を抜いたり。
抜いた部分に歯を入れるのに「インプラントは高いので無理。保険の範囲内で治療してもらおう。」
という事で、歯を抜いた部分の前後の歯を大きく削って「保険の銀歯のブリッジ」を入れて貰ったそうです。

3本の銀歯の真ん中の、表だけ白い歯の下には歯がありません。そこに「保険で歯を入れる」為に前後の歯をぐるりと削って「ブリッジ」という橋のような構造体が入れてあるのです。犬歯のすぐ後ろの歯だから銀歯が丸見えなのですが、まあ、保険のルールに則った正しい治療方法ではあります。

ところが、10年ほど経って、その部分の歯の調子が悪くなったそうです。拝見すると上の写真のような状態になっていました。何が問題かわかりますか?

左側の歯の根っこは本来、黄色の・・の線で描いた所にありました。この歯は神経が取ってある歯なので脆く割れやすくなっていました。その歯をブリッジの土台にしたので、負担がかかって、歯が割れてしまったのです。青で示すように、竹を割ったように真っ二つになってしまっています。もう抜くしか選択肢がありません。

一番左に写っている虫歯になっている歯は犬歯です。一番右に写っている第2大臼歯はとりあえず残せますが、奥歯が3本も無くなってしまうので、まともに食事をする事ができません。

この方の年齢が40歳としたら、後40年から50年は余命がある可能性があります。どう思われますか?

主観的な見解ですが、こういった治療(?)はその場しのぎをしているだけで、そのツケを払うのを先延ばしにしているだけのように思うのです。昭和の時代のように75歳位で寿命が来ていたなら、この「日本の保険治療」でも何とか一生過ごせたのだろうと思いますが、今は人生100年時代です。このペースで歯を失っていったら、なかなかタフな長~い老後が待っていると思います。

インプラントがベストだと言う気はありませんが、前後の歯を削らずに抜けたところにインプラントを入れていたらどうでしょうか?

「とりあえず」「その場しのぎ」「今は安い治療で」の繰り返しのその先にある、貴方の老後のお口の中を想像して下さい。

早目にちゃんとした治療を選択するのも、一つの生き方だと思いますよ。

(乳歯の)前歯を打って、変色してきたらどうするか?

4歳前後は元気盛り。お外で走り回って、転んだりするのは日常茶飯事ですね。でも、まだまだ上手に転ぶ術を知らないので時々は顔から行っちゃって前歯を強打する事があります。

4歳の元気な男の子。転倒して前歯を強く打ってしまい、3週間ほど経ってお母さまが「歯が茶色に変色してきたんです。どうしましょう?」と慌てて英保歯科に来て下さいました。正面の前歯2本が茶色くなっているのが見て取れますか?

「歯を強く打ったせいで歯の神経が死んでしまったんです。残念ですが、神経を取らないとダメですね。」

なんて、何十年も前にはそんな事を言っていきなりガリガリやっていたのですが、今は違います。

小さな子供の生体活性は大人と比較すると、とても高い。こんなに茶色に変色していても、(何もせずに)じっと待っていれば元の綺麗な白い歯に戻る事がしばしばです。

8か月後の状態。本来の歯の色に戻っています。神経も生きていますよ。

私と保護者様と本人さんがやった事は「回復力を信じて、ただじっと待つ」事だけです。

歯も生きています。特に子供の歯は想像を遥かに超えて、非常にデリケートなんです。

歯が、こんなに神秘的な臓器だとは思わなかったでしょう?簡単に虫歯にしたリ、ホイホイと神経を取ったりしたらダメな事も想像に難くないですよね。

過信は不幸の始まり

ウクライナとロシアの戦争が続いていますが、You Tube でロシア軍の戦車などが爆破されるリアルな映像を見る事ができます。凄い時代ですね。
Ukrainian Ground Forces destroy Russian tanks with precision strikes

「あの戦車の中にも家族のある人間が乗っていて、その人間が一瞬で死んでいるんだ。」と思うと、とにかく一日も早く戦争が終結して欲しいと願うばかりです。

プーチンは「ロシア軍はとても強いので2日でキーウを陥落して戦争が終わる」と思っていたようですが、実際は思っていたほど強くはなく、その過信が不幸を引き起こしています。

過信は禁物といえば・・・。久しぶりに歯の話をしたいと思います。

以前このブログで「人生100年時代がリアルになってきた今、本来の歯の耐用年数を遥かに超えて長期間歯を使わざるを得ない状況になっている」というお話をした事があります。

さて、

①人間の歯は(いたわって使う事無く)何も考えずにガンガン噛んでも85年とか持つほど強いものなのでしょうか?
②歯科治療を受けた歯、特に日本の保険歯科治療を受けた歯の強度は、思っているほど強いものなのでしょうか?
③削りまくった歯や、神経を取った歯の強度は思っている程強いものなのでしょうか?
④保険証を持って歯医者に行ったら、何度でも何度でも歯を修理させる事ができて、全ての歯を一生持たせる事ができるのでしょうか?

え、そんな事、思った事も考えた事も無いですって?

では、ここでいくつかの事例を挙げますので、これらを見ながらご自身で考えてみて下さい。大切な自分の体の事だから、是非自分で考えてみて下さいね。

70歳。かみ合わせも完璧で虫歯も歯周病も無いのに突然✖の歯が「噛むと痛く」なったそうです。
歯が中央からまっ二つに割れています(1)。割れた隙間にニンジンが詰まっています(2)。

この歯は4番という歯で、食べ物を最初にかみ砕くのに使います。なんでもバリバリ噛み続けて70年。そりゃ壊れる事もあるよね。抜いてインプラントという話をしたら「晴天の霹靂でショックです。」との事。私は「本当に気の毒だが、ある意味当然といえば当然の should。70年間も(容赦なく)使ってきたのだから。」なんて思ったりもします。

80歳。6番を抜いてその前後の歯に持たせる形で保険のブリッジをしてもらっていたのですが、奥歯に痛みが出て来ました。
歯の〇で囲んだ所が砕けて割れています。
本来は1のような形の根っこなのですが、2の部分が割れて3にズレちゃってます。

大きく削った歯、特に神経を取った歯は弱いね。この場合、いよいよ抜いて入れ歯かインプラントか放置ですが、80歳といっても一般的には後10年の余命があると思われますので、どうしたものか悩んじゃいますね。現実には抜いて放置となるのだろうか・・・。それでもこの方は8020は余裕で達成しているので、後10年ならそんなに困らず行けるかも。

まだ45歳。✖の歯が「噛むと痛い」との事。神経を取った歯の根の周囲の骨が溶けています(1)。
神経を取った歯にはまれに(日本ではしばしば)この病巣ができます。怖いけどこれが現実なんです。
神経を取った歯は弱い。上の写真の✖の歯は割れてしまっていました(1)。
もう抜くしか仕方がありません。
つるつるだった金属のクラウンがザラザラになる程に「容赦なく」歯を使っておられます(2)。

本人さんにこの写真を見せながら「あなたの歯の使い方」の問題点を詳しく説明させて頂きました。この方の人生はまだまだ先が長いからね。20年先で頭を抱えるようになって欲しくないから。

如何ですか?歯に関しても「過信は禁物」と解って頂けましたでしょうか?

プーチンは自軍が強いと思い込んで多くの兵士を失いました。兵士は徴兵や傭兵で補充すれば新しく入る事は入りますけれども、歯はどうでしょう?

自分の歯や、歯医者が修理した歯や、神経を取ってしまった歯の強度を過信して酷使し、自らとどめを刺してしまい、その結果その歯を失っても(兵士のように)新しく入れる事はできません。代わりがないのです。

柔らかいものばかり食べろという訳ではありませんが、歯をいたわって大切に使い、硬いものを噛む時にも(急激にバリッとやるのではなく)ゆっくりしたスピードでかみ砕くなどの工夫をして「自分の体(歯)は自分で責任を持って守る」ように努めて頂ければと思います。

30年以上歯医者をやっている私の経験からの見解ですが、インターネットの出現によって人々のストレスが増加したので、就寝中の食いしばりや歯ぎしりによって歯を破壊している人が(近年)激増していると感じています。

御自身の歯を200年ピカピカで持たせる必要はありません。100年という長き一生に渡って、虫歯の治療や修理を繰り返しながらでも何とか死ぬまで(ほぼ)全ての歯を維持できれば、それで大・大成功なのです。

「必ず保険の範囲内で」≒「カップラーメンしか食べません」かも

誤解のないようにお断りしておきますが、今回のブログの内容は「保険の治療は全然ダメで必ず自費治療を選択して下さい。」という事ではありません。実際に英保歯科でも、お客様の治療費の総額を抑えて経済的負担を減らすために保険の銀歯を使う事はよくあります。インプラント2本で100万円近い出費になるのに、それに加えて他の歯は全部セラミックになんて、三田の歯医者では現実的ではありませんから。

今日、こんな事がありました。

「奥歯の銀歯の所が痛いんです。しみるっていうより、咬むと痛いというか、何か変。診て頂けますか?」との主訴で来院された英保歯科のファミリーのお客様。

私:「拝見しますね。どれどれ・・・。」

右は10年以上前に他院でやってもらった保険の銀歯。よく持っています。突っ込みどころはありますが、概して良い治療がしてあります。
左は数年前に当院で治療させて頂いたジルコニアセラミックの被せです。

私:「銀歯の所の歯肉に炎症がありますね。写真を撮って説明させて頂きますね。」

保険の銀歯は昭和の時代からずーっとパラジウムという、ロシアから輸入されているメタルが使われています。昭和の昔はパラジウムが安かったから「この金属、安いし悪くないから、ゴールドの代替金属として保険の歯の治療に使おう。」と当時の厚生省が決めたんですね。それが(日本らしく、変わる事ができずに)ずーっと使われ続けているのです。現在の状況下でパラジウムの価格はべらぼうに高騰しましたが、確かに歯の治療に使うのには「悪くない」んです。

左右の歯肉を比較して下さい。色やブヨブヨ感の違いが判りますでしょうか?

日本人にはパラジウムアレルギーが突出して多い事が明らかになっています。理由は何でしょうか?
厚生労働省は最近、相次いで CAD/CAM 冠というプラスチックでできた被せやチタン合金製の冠を保険導入させました。でもこれらにはまだまだ技術的な問題が多く、理想的なパラジウムへの代替法とは言えない状況です。

今は何でもネットで検索できて、事実を知る事ができる時代です。今回の内容も同様に調べれば解る事です。

あなたの体に何を入れて欲しいのか、自分自身で調べてみて、考えて、歯科医師と相談する努力も、多少は必要かも知れません。今のウクライナの状況ではありませんが、安全や健康は「ぼーっとしていても、誰かがくれる」ものではないのです。

元々そこにある自分の歯が一番安全です。ですから、とにかく予防に努めて下さい。予防すればタダで最高のものを手にし続ける事が出来るのです。

歯頚部への充填は(やられる方も、やる方も)慎重に

「歯がしみる。」と言うと、担当の歯科医師によっては「歯肉が下がって根っこが見えているのでしみるのでしょう。そこを削って詰めてカバーしましょう。」という提案がされ、それに同意されてそのような処置をお受けになる事があるかも知れません。

比較的最近、他院でそのような治療を受けられたそうです。私からお勧めしてやり直しさせて頂く事になりました。この歯を末長く使って頂きたいので。
防湿の為と治療部位を明示する為に、麻酔をして歯肉圧排コード(白い点々)を挿入しました。一時的に歯肉を押し広げます。
白い点々の所には糸が入っています。詰め物の状況が良く見えるようになりました。どうですか?
詰め物詰め物を慎重に削り取りました。
クレンジングをして徹底的に清掃します。
ZOOで防湿して、歯肉圧排して詰め直しました。でも、元の無垢の歯に戻った訳では無いのです。
圧排糸を撤去して完了。そもそも論ですが、この歯のこの部分にレジン充填をすべきだったのでしょうか?青の部分も同じように歯肉が下がっているんだけどね。
全く同じようにして、他院で受けられた歯頚部へのレジン充填をやり直します。頑張ろう。
やってもらった詰め物がはっきり見えるようになりました。どうですか?
慎重に削り取って行きましょう。

このように、この手の治療は「チャチャッと簡単に」は出来ない、難しい治療なのです。

露出した根面には、フッ素でコートするとか、被覆する手術をする等の「歯を削らない」治療のオプションも選択できたはずです。

一旦削ってしまった歯は元に戻す事が出来ませんから、やる方もやられる方も治療のオプションを慎重に選択して欲しいものです。

英保歯科のファイバーコアへの拘り

たまには歯の話を。

ファイバーコアが保険に導入されて久しいですが、このファイバーコア、「どこで誰がやっても同じ」じゃないのかも知れません。

歯科用接着材の進歩によって治療直後はとりあえずくっついっているのですが、2年、5年、10年と経過した時にどうなって行くかは、歯科医師の接着に対する知識、器用さ、それから情熱や拘りによって変わってくる可能性があります。

こちらは、何年か前に他院でやってもらったコアだそうです。接着が劣化しているように見えます。
撤去しみたところ。歯肉の下まで虫歯が進んでいました。リカバリーが大変だ。もしこの歯を長期的に残したいと望むなら、臨床歯冠長延長術という手術を受けて頂く必要があるかも知れません。

虫歯の治療をして欲しいだけなのに、手術なんて嫌ですよね。私も同感です。

長期的に安定した接着が維持できていたなら、手術なんて話もしなくて済んだかも知れません。

英保歯科のファイバーコアにはいくつかの拘りのポイントがありますので、それを紹介してみようと思います。マニアックな話だけど付き合ってね。

拘りその1:う蝕検知液を使って虫歯菌の取り残しが無いか徹底的に確認します。この赤い液を塗った後に洗い流したら、虫歯菌に感染している部分が赤く染まったままになります。
洗い流した後。赤く染まっている所がちょくちょくあるでしょう?ここをちゃんと削って取っておく事が大切、だと思っています。
拘りその2:虫歯菌が感染している部分をちゃんと取り除いたのですが、更にマルチエッチャントを使って象牙質のクレンジングを行います。これも大事な事だと思っています。
拘りその3:綺麗になった歯の内部に接着剤を塗布する前に、完璧に乾燥させる事が大切だと思っています。防湿装置ZOO(特許取得済み)(青)を使って湿度を下げて、マイクロキャピラリーチューブ(緑)で歯の内部の水分を徹底的に除去します。パリッツパリに乾かす。拘るでしょ?
拘りその4:塗布した接着剤は可視光を照射する事によって硬化します。深部は光が届きにくいため、ルーシーポストという集光器具(黄色)を使って光を奥の奥まで到達させます。カッチカチに固める。これも大事だと思っています。
拘りその5:今回は自由診療の根管治療とファイバーコアの治療をご紹介しています。自由診療なので保険では使えないファイバーを選択して使う事ができます。光ファイバーが中心に入っている特別なファイバーを使います。光ファイバーを通して光が深部まで到達するから、奥の奥までカッチカチに固まる。大事な事だと思うよ。
拘りその6:マルチファイバーテクニック。スリーブ状のファイバーも併用して、複数本のグラスファイバーで強度をアップしています。かなりテクニックが要りますが、大事な事だと思っています。
拘りが一杯詰まったファイバーコアの完成。40分かけて丁寧に治療させて頂きました。
このファイバーコアという治療ですが、完成直後のパッと見はどこの誰がやっても一緒です。服や電気製品や野菜などと同じで、海外製でも国産でもパッと見は似たように見えます。

私は「絶対にここまで拘ってやらないといけない」と主張する気はありません。でも、自分の歯ならこんな感じでやって欲しいなと思います。

皆さんはご覧になってどう思われましたでしょうか?

この違いは「防湿へのこだわり」からか?

今日、お二人のお客様の保険の銀歯(被せ)を外して、興味深い経験をしました。

A 様も B 様もお二人共英保歯科に予防に通院されている30歳代の女性で、共に約3年前に奥歯に装着した保険の銀歯の被せを外したのです。目的は「ジルコニアの白く清潔な被せに変更する」ためです。

お客様の条件としてはほぼ同じという事になりますので、比較対象になりますね。

唯一の違いは「英保歯科で装着(接着)した保険の被せ(A様)か、他院で装着(接着)した保険の被せ(B様)か」という点だけです。

A様:3年前に英保歯科で装着した保険の銀歯の被せです。
A様の被せを除去したところ。3年経過していますが、内部は綺麗でホッとしました。
B様の被せ。こちらは英保歯科ではなく、某歯科医院で3年程前に作製・装着してもらったものです。
同じように除去してみました。内部には細菌が侵入しており、このように汚染されていました。

同じ保険の銀の被せなのに、何故このような違いが出るのでしょうか?正直言って私にも解りません。

だた、英保歯科では被せを接着する時にも必ず防止装置(ZOO)を使って、歯をしっかり乾燥させた状態で接着剤を塗るようにしています。

ひょっとしたら、私のこの「防湿へのこだわり」が経過の違いをもたらしているのかも知れません。エビデンスはありませんので想像ですが。

保険のCAD/CAM冠の長所・短所

はじめにお断りしておきますが、今回お話する事はあくまでも私の個人的な見解であり、厚生労働省が認可し歯科医師会や各種学会が安全として採用している治療方法を否定するものでは、一切ありません。

「保険でも結構奥歯まで白い被せに出来るようになりましたよ。お安く出来ますので、今回の虫歯の治療は銀の被せではなく保険で白い被せにしませんか?」と担当の歯科医師から説明された事はありませんか?

それは保険のCAD/CAM冠という、かなりの強度を持ったプラスチックのブロックを削り出して作った被せ(クラウン)の事です。

【注意】今回お話する保険のCAD/CAM冠は被せ(キャップ形態のもの)であって、保険で出来る白い詰め物(コンポジットレジン充填)とは全く異なる治療方法です。混同しないようにして下さい。

この保険のCAD/CAM冠ですが、英保歯科では過去に数本程度の治療経験がありますが、その数回の使用経験から思うところがあって最近は全く使っておりません。

最近は「ジルコニアの被せか金の被せか、あるいは保険の銀(色)の被せ」から選択する事がほとんどで、保険のCAD/CAM冠は、もう長くは持ちそうにない程に傷んでしまっている歯で、かつ目につく部位にある歯に対して「短期間の最後の『死に化粧』として使う」事が稀にある程度です。

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最近、「他院でやってもらった保険のCAD/CAM冠が脱離した。」との事で来院されたお客様がおられましたので、この症例を通して私が思う保険のCAD/CAM冠の長所と短所についてお話したいと思います。

中央が保険のCAD/CAM冠です。右は保険の銀歯。左はご自身の無垢の歯。左は最高のクオリティ、尚且つタダ(0円)!

この中央の保険のCAD/CAM冠が外れちゃているそうです。指でそっと引っ張ってみると・・・。

内部の歯がこんな風に真っ黒けになっています。何で?何が起こったの?
その外れた保険のCAD/CAM冠の内側を見てみましょう。元々は白くて綺麗だったはずの内面ですが、ご覧のように黒いものがいっぱい固着しています。何で?

保険のCAD/CAM冠の長所:
1)値段が安い

保険のCAD/CAM冠の短所:
1)高強度といっても、しょせんプラスチックなので咬合力(ものを食べる力)がかかる度に変形・復位を繰り返し、界面の接着が少しずつ破壊される。完全に外れてしまうまで、クラウンと歯の間が開いたり閉じたりしてポンプのようになり、食べカスや虫歯菌や歯周病菌が内部に侵入する。場合によっては内部を真っ黒な虫歯してしまい、その歯の寿命を非常に短くしたり、しばしばターミネートする。
2)歯を削る量がとても多い。歯を削る量は (レジン充填<)金や銀(色)の金属の被せ<ジルコニアクラウン<eMAXなどのガラスセラミックスによる被せ<保険のCAD/CAM冠となる。理由は(プラスチックなので)割れてしまったり、変形による早期の脱離を避けようとしてクラウンの厚みを厚くする必要があり、結果的に歯を細く削ってしまうようになる。歯の寿命は残存歯質量に比例するので、歯を細く小さく削ってしまうと、場合によってはその歯の寿命を非常に短くしたり、しばしばターミネートする。

早期に外れるとトラブルの原因になるので歯科業界は少しでも長い間外れないように接着剤などを改良する努力をしているが、しょせんプラスチックの歯なので何をやっても上記の現象は避けられない。個人的には「むしろ早期に外れてくれた方が歯のためにはマシ」とさえ思えてくる。

とにかく今回は、この(外れてきた)保険のCAD/CAM冠をできるだけ綺麗に清掃して再度装着させて頂きました。しばらくはくっついているでしょう。

他院の担当の先生が責任を持って説明し、こちらのお客様もその時に自己責任でお選びになった上で、お二人で施行された保険のCAD/CAM冠の治療です。(この方と私との信頼関係が確立されていない現時点で)私が保険のCAD/CAM冠についてとやかく言っても「自由診療を勧めてくる、儲け主義の歯医者!?」と誤解される恐れがあります。何年か予防歯科で当院に通院して下さった暁には、私を100%信じて貰えるようになるかも知れません。その時を待ちたいと思います。

チーム英保歯科とお客様とで協力して一生懸命行った自由診療の仕事です(技工は Dental Digital Operation 様)。緑はご自身の歯に被せたジルコニアクラウン。お客様の希望で根管治療をしなかっので、1本10万円程度です。(青はインプラントの上部構造にジルコニアクラウン使いました。2本のインプラントを含め、この4本の治療費は合計で100万円程度かかりました。)
他院で行った保険のブリッジが入っていたのですが、「ちゃんとした治療をして欲しい」とのご希望で英保歯科にお越し下さいました。
緑に対して本当は根管治療とコアからやり直しさせて頂きたかったのですが、この時はまだお付き合い始まったばかりだったので無理でした。今ならOKが出るよ、きっと。

保険のCAD/CAM冠も自由診療のジルコニアクラウンも、どちらも白い歯ではある訳ですが、あなたはとどちらに Value for Money を感じますか?

私なら同じ白い歯でも100%自由診療のジルコニアクラウンの方に感じますね。

おっと、その前に「予防して自分の歯を虫歯や歯周病にしない努力を選択します。」と言うべきですね。そうすればタダで最高のものを手にし続ける事ができるのですから。

意図的抜歯・再植術(閲覧注意)

歯医者のブログだから、今日も歯の話。決して話題に困っている訳ではありません・・・。
えっと、今日は「残せそうにない歯を一旦抜歯して、位置を変えて再植した」という手術の写真をお見せします。見たくない人は見ないでね。明日は岡山大学に講義に行ってきますので、普段のようなブログに戻る予定です。

もう25年以上もずーっと真面目に、英保歯科に予防の為に通院して下っているご婦人。予防歯科のお陰で未だに一本も歯を失っておられません。「英保先生と出会えて自分の歯を全部保つ事ができています。」と言って下さいます。私達の想いが伝わっていて、嬉しいな。

その彼女も今では75歳を超えていらっしゃいます。今日、「銀歯が折れた」との事で(ドクターのアポイントで)来院して下さいました。

そのご婦人の歯。他の歯科医院で過去にやってもらった、左に写っている銀歯と同じような保険の銀歯がかぶせてあった歯が「ポキッ」と折れたそうです。神経が取ってある歯だから弱くなっていたのでしょう。何とかしてあげたいと思って頑張ってみたのですが、歯肉の中の方で折れているから(黄色矢印)どうしても残せそうにありません。

「抜かせて頂いて宜しいですか?抜いた後はインプラントになるかも知れません。お金がかかる治療になる可能性がありますが・・・。」とお伺いすると「ハイ。英保先生がおっしゃるのでしたら諦めがつきます。その後の治療もお金がかかっても、先生の言われる通りにしたいと思います。」とのお返事を頂きました。信じて貰えて嬉しいな。

神経を取ってある上に高齢なので歯根と骨が癒着しているのですが、なるべく歯を壊してしまわないようにオステオトームという器具を使って慎重に抜歯しました。上手い具合に歯を傷つける事無く抜歯できたので・・・。虫歯になっていた場所を歯肉の上に位置させて再植してみる事を(術中に)ご提案しました。

「英保先生にお任せします。」とのご返事。信じて貰えて嬉しいな。

抜いた穴の底にベータTCPという人工骨を填入しました。
これがベータTCPという人工骨。時が経てば吸収されてご自身の骨に変わります。
そのベータTCPの上に抜いた歯を植え直して縫合しました。虫歯の部分が歯肉より上に位置しています(青矢印)。

この後、この歯が骨に癒着するのを待ってみたいと思っています。癒着した歯根は徐々に吸収されてしまうのですが、運よく10年持てば85歳です。これが成功すればインプラントを避ける事ができると同時に歯を一本も失わずに済みますね。

このようなチャレンジングな治療は「歯科医師とお客様の信頼関係」が完全に出来上がっている時のみご提案が可能だと考えます。

歯科医院とお客様の信頼関係も夫婦の信頼関係と同様に、何年も何年もかけて築き上げるものなのです。彼女と私はその信頼関係が出来ているのです。

セラミックのかぶせを外して再治療した。これも予防歯科なんだけど、解る?

歯医者のブログなので、当然のように今日も歯の話です。(え、最近は車の話ばっかりだったって?そうだったかなァ?)

ずーっと英保歯科に予防に来て下さっているお客様の歯です。昔他院でやってもらったセラミックの歯の歯肉側が茶色になっています。「今ちゃんと修復し直さないと、ポキッと折れてきたりした時には抜歯してインプラントですよ。」と説明したところ、自由診療でやり直しされる事を選択されました。信じてもらえて嬉しいな。
根っこの先に病巣があります・・・。
セラミックの被せを外してみたら・・・。まあ、わかってたけどね。
銀合金のメタルコア(金属製の土台)を取り除いたところ・・・。まあ、わかってたけどね。
・・・。頑張って掃除しよう・・・。
根管充填剤というものを全て取り除きました。(青い所に入っていた)。これが大変な仕事なんです。
根っこの先っちょの近くにある側枝という所(黄矢印)にバイオセラミックスを填入する事に成功!これで病巣は縮小するはずです。
今回は土台にファイバーコアを使いました。黒い所は銀合金によるタトゥーで虫歯の取り残しではありませんからご心配なく。
丁寧に削って、技工士の先生にジルコニアセラミック冠を作ってもらいます。
ジルコニアセラミック冠を仮止めして使ってもらいます。具合が良かったらレジンセメントで接着します。

自由診療で20万円ほどかかりますが、これでこの歯の寿命を「グン」と延ばす事ができました。充分に価値のあるお金の使い方だと、私は思います。読者の皆さんの価値観からご覧になったら、どう思われますか?

できれば10年、20年と持って欲しいのですが、既に神経を取ってしまってありますからね・・・。祈る思いです。

私が言いたい事は「歯科医師がこれだけ頑張って、お客様は何回も何回も通院して、高額の治療費を払っても、元々の無垢の歯には戻せない」という事なのです。予防が一番シンプルで簡単でほぼタダである事をしっかり理解して実践して頂きたいと願います。