「予防歯科」カテゴリーアーカイブ

歯並び以外に、歯ごたえのあるものを食べる効果

米国では肥満による睡眠時無呼吸症候群がほとんどだそうですが、日本人には太っていないのに、その病気で苦しんでいる人が多いそうです。その理由は弥生人風(しょうゆ顔)の顔の骨格にあります。縄文人風(ソース顔)の人は南方系ですが、秋田美人に代表されるほっそりとしたしょうゆ顔は北方系と言われます。
男も女も小顔ブームで、アイドルもジャニーズも誰もかれもエラが張っていないほっそりとした顎を好みます。
呼吸の関係から言うと、むしろ、がっしりとした顎の方が上気道の確保に有利なのです。
歯並びという視点から、積極的に歯ごたえのある物を子供たちに食べさせようという意見がありますが、同様の事は呼吸の視点からも言えると思います。

バギーのポケットからラムネ菓子?

思わず窓を開けて「そんな事したらアカーン!」と叫びそうになりました。先日車を運転していて、信号で止まっていた時の話です。2歳くらいの子供をバギーに乗せてお出かけされていた若いご夫婦ですが、ちょっと子供がぐずった様子で、すぐさまラムネ菓子を取り出して子供のお口の中に入れたのを見た時です。
精製白砂糖の精神に対するインパクトは強大ですから、確かにすぐに静かになりますが、3歳までの味覚の形成時期には精製白砂糖の与え方には慎重になりすぎてもなり過ぎという事はありません。
同様にスマホを子供に渡して触らせておけば静かになるので、そうされる方も見受けます。
私も4人の子供を持つ父親として、子育ての大変さは解っているつもりです(母親の100分の1くらいでしようが)。
妻は時々「砂糖菓子やスマホで黙らせるより、真正面から子供に向き合う方が、大変だけれども自分も子供も成長できる。」と言っています。
頑張れば子供も親も立派に成長し、素晴らしい家族となることでしょう。

一生のうちにブラッシングする時間の合計は同じ?

患者さんを診させて頂いていると、タイトルのような考えが頭に浮かんできます。小さい子供の頃は本人に責任はありませんが、小学校高学年以降、歯の大切さを理解できず歯磨きをおろそかにしてきた人の例えです。子供の頃に虫歯を沢山作ったり、成人以降も真剣に歯を磨かずに歯周病で歯を失ったりした人は、そのうち歯がだんだん減っていって事の重大さに気が付きます。そして文字通り「改心」して一生懸命歯を磨くようになります。また、岡山大学予防歯科方式の歯周病治療では長時間のブラッシングを行って頂きますので、若いころのチョチョッで済ましていたブラッシングの時間と、「改心」してからの長時間のブラッシングの時間を合わせると、ずっと歯を大切にしてきた人の時間の合計と変わらないなーと思う訳です。
一生でみるとどうせ同じ時間磨かないといけないなら、若いうちからしっかり磨いて頂けます、よね。

チンパンジーと人間の違い

元々は同じだった人間とチンパンジーですが、進化の過程で2つの大きな違いができました。2本足で歩ける点と言葉を喋る事ができる点です。
人間は2本足で歩けるおかげで文化的な生活と農耕による安定した食料供給を手に入れましたが、背骨の椎間板という部分の負担が直立歩行と農作業により限界を超えた負荷を受けています。
チンパンジーも英単語を何千と覚える事ができます(!)が、それを発音する事ができません。人間だけが言葉を喋れる理由は舌とその周囲の器官を巧妙に動かして様々な音を作る事ができるからです。但し、その代償に舌は上下方向にに大きくなり、肥満や顎の成長の不良がある場合にはいびきや睡眠時無呼吸症に苦しむようになります。
子供達に歯ごたえのある物を食べさせて、顎を大きくする事は歯並びの見た目の問題だけでなく、健全な生活を送るためにも大切であることがわかりますね。
歯と口腔を健全に成長させそれを保つことは生命に影響する事なのです。

岡山大学予防歯科式歯周病治療

私が母校の岡山大学の大学病院で勤務していた頃、歯周病治療を2つの診療科で行っていました。
一つは保存科(歯周病科)、もう一つは予防歯科です。前者は最新の遺伝子診断や検査、手術などを駆使して科学的に歯周病を治す方針を、後者は「爪楊枝法」と言われるブラッシング方法を主体にして歯周病を治す方針でした。
聞いた感じでは、まるで米軍と旧日本軍のような違いがあると思いませんか?それでは米軍と旧日本軍、米軍だけが常に優秀であったかと言えばNOですよね。
私は予防歯科で、本気で丁寧にブラッシングするようになった方の歯周病がどれだけ劇的に改善したかを目の当たりにしてきました。自分としては予防歯科の歯周病治療の仕方の方が好きでした。今でもそうですが。
当時の経験から、現在でも自分の担当する歯周病の患者さんには、時に、「テレビを見ながら、あるいは車に乗っている時でも良いので20分から30分歯ブラシをして下さい」という事があります。
そう言うと、患者さんからは変な目で見られ、その方法は英保歯科の衛生士からも否定される事がよくあります。
でも、正直な所、このアドバイスは核心をついたものだと今でも信じて疑いません。

100回注射、300回通院

学校健診で虫歯と言われ、来院してくれた子供さんです。とても良い子で、お家の方も感じの良い方です。ただ、気がつくチャンスが無かっただけなのです。歯の大切さと予防歯科の重要性に。
歯科医や学校がもっと予防歯科の普及に頑張らないといけないなと深く反省させられる瞬間です。ごめんなさい。ごめんなさい。
一般的には「何本か虫歯があるので、歯医者に行ってなおしてもらおう」といった感覚なのでしょう。悲しいかな日本ではそれがフツーです。
問題はこの子の家庭に予防歯科の概念と知識が欠如している事なのです。何回も言っているように歯医者に行っても歯は元通りにはなりませんし、修繕が追いつかない程の速度で虫歯ができています。
この子は、これから一生の間に少なくとも100回は歯ぐきに注射をされて、少なくとも300回は通院し、歯を削られたり、神経を抜かれたり、銀歯を入れられたり、そしていつかは歯を抜かれたりするようになります。歯科医師の私にはこの悲しい将来が見えてしまいます。
一日も早く、一人でも多くの方が予防歯科の重要性に気がついて欲しいと思います。そのために私達歯科医療従事者も頑張ります!

現実を直視しないとね

終戦70周年の今年は、例年よりたくさんの戦争経験者の談話が新聞(やテレビ?我が家は長女が生まれた時にテレビを粗大ごみに出して以来テレビを見ないので知らないのですが・・・)に掲載されています。
皆さんの共通した意見は、米国の強大な国力を冷静に直視していれば米国との戦争に勝てるわけがないとすぐわかるのに、日本人の特性として、現実を冷静に直視せず、自分に都合の良い様に物事が運ぶ(はずだ)と思いたがる所があるという事でした。
面白い、興味深い意見だと拝見したのですが、歯に関しても全く同様の事が言えます。自分の歯の状況について、できれば聞きたくないし、知らないふりをしておきたいと言われる方が時々おられます。
そして、歯科医や衛生士が痛い目にあわせたから定期検診に来たくなくなった。と、言われる方もおられます。
歯の健康管理は他の体のパーツ同様、自分で責任を持って能動的に行う事だと思います。
今のお口の中の状況を早急には把握して、現実を直視してあげることが、(戦争同様に)手遅れで悲惨な状況になってしまう事を回避できる唯一の方法です。

朝の歯磨きは朝起きてすぐか、それとも朝食後か?

食後すぐに歯磨きをしない方が良いという考え方に賛成なら、現実的には朝起きてすぐという昔のスタイルに戻るべきでしょう。
朝食後はすぐにでも家を飛び出して会社や学校に行かなくてはなりません。誰も毎食後30分も待って歯磨きをするほどヒマじゃありません。
朝起きてすぐは、寝ている間にお口の中で増えてしまった雑菌を取り除く絶好のタイミングです。
成人の方で、で食事の後食べかすが詰まっている事が多い方は、直後でもよいのでフロスとぶくぶくうがいだけしっかりやってお出かけ下さい。
休みの日は30分後にしっかりブラッシングして下さい。その日は朝起きてすぐの歯磨きは不要です。ね。

防湿が最重要

下顎の奥歯の治療で、ラバーダムやZOOなどの防湿装置を使用しないという事は、唾液の中の細菌が治療中の歯に「かかり放題」になっているのに治療を続けている事になります。細菌が残ったままで詰めてしまったり、神経の治療をする事はとても恐ろしい事です。
名医を自称する歯科医は多いですが、「100%防湿をします」と宣言している歯科医は少ないはずです。このハードルは低くないからです。
一から十まで、何から何まで自由診療のセラミックやインプラントを勧めてくるわりに防湿をほとんどしない歯医者がいるとしたら、、どうなんでしょうね。
本当に患者さんの事を思うなら、まず歯の大切さと予防歯科の重要性を強調し、保険で何とかできるところは保険でもきっちり治療をしてあげて、ちゃんとしなければいけないところは、言いにくいけれども自由診療のご提案をすべきだと思います。
それこそが良い歯科医だと、近頃、心から思い始めました。

保険の治療と自費の治療の分かれ目

たとえ保険の治療であっても、下顎の奥歯の治療の時にでラバーダムやZOOなどの防湿装置を使用しない歯科医院はその時点で見切りをつけた方が良いと、はっきり言えます。
「先生やスタッフが優しい」「いつでも診てくれて親切」など、いろいろな長所があったとしても、防湿をせずに治療をする点で、「本心で患者の利益、歯を本気で守る事を考えていない」と断言して良いでしょう。
学校健診などで「C1」と表現される初期の虫歯、しかも、噛み合せの面に限定した、本当に小さな虫歯の場合には、きちっと防湿をしてていねいに治療をすれば保険でも充分な治療ができます。
それ以上のサイズの虫歯になってくると、保険の治療と自由診療の治療では長い目で見た時に差が出てきてしまいます。チョイチョイで済む保険の治療でとりあえずお茶を濁した場合には、将来必ず、リカバリーのために想像以上の時間と苦痛と出費を強いられる事になります。
要は、100%防湿をするドクターが状況に応じて「これは保険でも充分しっかりと治療ができます。(あるいは黙って保険で治療をしてくれた)」とか「この歯の治療には自由診療の方がメリットが多く、結局はお得になります。そして、かけがえの無いこの歯を長く使う事ができるようになります。」といった説明をしてくれる時に、耳を傾けてみる事が大切です。