「最重要!予防のキーポイント」カテゴリーアーカイブ

ヤクルトは体に良い?

ヤクルトに入っている乳酸菌が体に良い事は認めます。でもビオフェルミンなどの昔からある安全な接種方法もありますし、最近ではたくさんの優秀な乳酸菌のサプリメントが開発され新聞などで広告されています。
問題はヤクルトにの味付けに使われている高濃度の砂糖が子供の歯を破壊する事にあります。魅惑の砂糖の味を覚えてしまうのにこのような簡単な方法はありません。破壊されるのは歯だけでは無い事はこれまでに何度も話してきました。
予防を重視する歯科医師、そして砂糖が子供たちの体に与える悪影響を危惧する一人の大人の立場として、「ヤクルトは、どうか勘弁してやって下さい。」と言いたいところです。
甘味料成分がキシリトール100%のヤクルトが(現在の商品と同じ値段で)発売されることを期待します。
アクエリアスやポカリスエットなどのスポーツドリンクにも全く同様の事が言えます。これについては又の機会に話します。

子供の虫歯予防の鍵は?

フッ化物の応用以前にまず正しい食生活習慣が鍵である事を理解して下さい。
生れてから中学校卒業まで白砂糖は可能な限り避けてあげる事。その他の虫歯の原因になる可能性のある甘い物(てんさい糖、三温糖、果物、ジュースを含む)も食事の時以外、決められたおやつの時間に限り1日1回に留めて、虫歯の原因となる糖質の摂取を一日計4回までとする。
そのような生活習慣を続ければ、甘味に対する嗜好の定着、刷り込みを回避できるので、一生砂糖中毒に陥る可能性が少ないでしょう。そうなればしめたもので、虫歯、肥満、Ⅱ型糖尿病、白砂糖が原因の精神的な問題などから縁遠い人生が送れる可能性が高まります。
実際に我が家は4人の子供をこのようにして育てています。4人ともクラスで背の高い方から数えた方が早いほどすくすく育ってくれましたので、少なくとも我が家の経験からは、この生活習慣が栄養学的に問題があるよとは考えられません。
高校生の娘は白砂糖のコンビニケーキ1個で充分満足する(むしろ苦戦する)ような味覚になってくれました。この教えはきっと彼、彼女達の子育ての時にも反映され、プラスの連鎖が続くと期待しています。

高齢者の根面う蝕について

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ショッキングな写真ですが、80歳くらいの女性が「おせんべいを食べたら突然前歯が折れた」といってお見えになりました。一見何ともないような、普通の歯が3本突然根元の所からポキッと折れたようになっています。歯の頭の部分と根っこの部分のつなぎ目を「頚(くび)」と呼びます。その頸の部分で歯が突然折れたものですから、ビックリなさって来院された訳です。
歯の頭の部分はエナメル質という硬い構造でできており、フッ化物配合の歯磨き粉を使うとそこは更に硬くなって虫歯になりにくい状態になります。油断して甘い物をダラダラ食べていると、年齢と共に唾液量が減ってきますので高齢になってきた時に歯の構造が弱い所が簡単に虫歯になってしまいます。それがこのネックの部分なのです。ここはエナメル質でカバーされていないのでフッ化物の効果もあまり期待できません。
年齢が上がってブラッシングのスキルが低下してくる頃に、この根面う蝕が増加してしまうという、何とも悲しい現実が起こってきます。
これは介護の分野でも非常に悩ましい問題の一つです。

虫歯の原因は?

皆さんは虫歯の原因は何だとお考えですか?多くの方は「虫歯の原因は甘い物を食べすぎる事で、その予防は歯磨き!」とお答えになることでしょう。
では、風邪の原因は?そうです。ウイルスの感染ですよね。食中毒の原因は?そうです。ボツリヌスやサルモネラという菌の感染ですね。
もうわかりましたね。虫歯は恐ろしい事に虫歯菌という細菌が感染したためになるのです。もしも虫歯菌が感染していなければ、好きな時に好きなだけ甘い物を食べても虫歯にならないのです。(そんなことすると、他の病気になっちゃいますけどね。)
現実に虫歯菌が感染していないと思われる子供の数が激増して、子供のDMFという数値がついに1を切りましたね。(DMFはそのうち解説しますね)
ついに子供たちの虫歯はゼロ、が当たり前の時代が到来しました。
虫歯は感染症という事を覚えておいて下さい。

夜寝る前に徹底的にブラッシングを!

お口の中の細菌は夜寝ている間に増えていきます。お口は数時間閉じられて、37度に保たれています。まるでヨーグルトメーカーみたいな細菌の培養装置のようです。ですから、寝る直前のお口の中の種菌の量をしっかり減らしておくことが大切なのです。
もしも、一日1回しか歯磨きができないとしたら、夜寝る前に数分間、優しく丁寧に隅々まで(言葉で表現するのは簡単ですが、このスキルをきちっとみに付けていらっしゃる方は少ないですね)しっかりプラークを落として下さい。その後フッ化物を歯に応用してからお休みになるのが大切です。飲んで帰ってそんな事出来るかよ!という声が聞こえてきそうです。そんな時はサボってOKですよ。その代わり翌朝起きたらすぐにしっかり磨いて下さいね。
食後は?30分後に磨くか、食事直後だけなら子供はぶくぶくうがい、大人はフロスだけはしておくというのではどうでしょか。
フッ化物の普及で虫歯予防のために歯磨きを1日に何回もというのは意味が薄れてきているように感じます。
一方、歯周病対策はブラッシングが鍵になってきます。

歯はいつ磨く?

近頃、食直後のブラッシングは歯を傷めるので、30分後に磨くようにした方が良いという意見を目にしますね。はたして真実はいかに?
「えー、学校では3度の食事の後3分以内に3分間みがくようにと習ったよ!333運動とか言ってたじゃん!?」とか「小学校に上がっても我が子だけは歯ブラシを持参させて給食の後の歯磨きをさせていたのに!何よ今さら!」なんて声が聞こえてきそうです。
結論を言うと、新しい理論に軍配が上がりそうです。口腔細菌学の視点から見て、食事をした直後は歯の表面が強い酸性になっているのでそこをスクラッチするとかえって傷だらけになるという意見は正しいように思えます。
でも、食事が終わってから30分も待っていると、学校や会社に遅刻するし、尼崎で途中下車してトイレで毎日歯磨きするほど暇じゃないですよね。昼休みが終わってしまうし、毎日毎日、授業や会議の途中でトイレで歯磨きするのも不可能です、ね?
とほほ、どうしましょう?
答えのヒントは「一番大切な歯磨きタイムは夜寝る前」という非常に重要なポイントにあります。
続きは明日書きますね。

正座、地に足がついた状態、プラプラした状態

IMG_2420日本歯科医師会のパンフレットによると、食事をする時に正座をしている時が、この3つの中でいちばん咬む回数が多くなるとの事です。
ファミリーレストランなどで若いファミリーが時々使っておられる、テーブルに挟むタイプの子供の椅子がありますね。軽くて携帯に便利ですが、子供の顎を正しく成長させるという視点からは、残念ながら理想的ではないみたいです。
皆さん自分が食事をする時に足をプラプラさせるような椅子で食べてみて下さい。何とも頼りなく、しっかり噛む力が入らない事に気がつくはずです。大人でもそうなのですから、子供や老人はもっと食べにくいはずです。
正座は身長を低くするだとか色々な悪い噂があって、イメージが良くないのですが、このデーターからすると、昭和時代の日本の食卓のように家族でちゃぶ台を囲んで(テレビは無しで)正座して食事をしているのが一番顎の成長には良いようですね。
さすが、歴史の中でつちかわれた日本の生活習慣は凄いですね!

歯磨き(ブラッシング)の目的を明確に理解する

歯磨きをここではブラッシングと呼びましょう。ブラッシングが虫歯予防に大切である事は、幼稚園から小学校、中学高校とずーっと、繰り返し繰り返し刷り込まれますので、誰に聞いても「虫歯予防は歯磨き」と答えてくれます。
これまでのお話で「虫歯予防はフッ化物」と答えてくれる方がおられてもおかしくないと思っています。そうですよ。それも正しい見方です。
どんなに美人のモデルさんでも腸の中には必ず大腸菌がウジャウジャいて、それが体と命を助けてくれている訳ですが、同様にお口の中には常在菌という菌が必ず存在します。この構成の中身に悪玉菌(虫歯菌や歯周病菌)が増加すると困った事になる訳です。
リステリンなどの洗口剤で悪玉菌だけを殺す事ができれば良いのですが、ショットガンのように無差別に殺菌してしまうので使い方が難しいのです。
ブラッシングの目的はこの常在菌の量(特に悪玉菌)を一定以下に保つ事によって、虫歯や歯周病の発症を起こさないようにする事です。ですから別名「プラークコントロール」と言います。
素人のプラークコントロールの技術では限界がありますので、時々衛生士さんの指導を受けたり、プロケアー(professional tooth cleaning)を受けたりする事が必須になります。歯科医師の私でも年に4回衛生士の指導とプロケアーを受ける事を欠かした事がありません。

テレビを見ながら食事をすると・・・。

「食事の時にテレビをつけていると、かみ合わせ、特に成長発育期にある子供のかみ合わせに悪影響が出る」と言われると信じられますか?
休日の夕食はお父様もいらっしゃて、家族の団らんの貴重なチャンスですね。そんな時にテレビをつけたままにしていると会話もすくなくなってしまいます。是非食事の時はテレビを消して下さい。
皆さんの食卓は和風に床に座るタイプ?それともテーブルとチェアーですか?大体指定席があって、同じ場所に座りますよね。それで、テレビの位置はどうですか?
食べ物をかんでいる時は顎や周囲の筋肉などの成長に大きな影響を与えています。毎日毎日、子供が(親も?)食事の時にテレビを見ながら食べているとして、そのテレビが子供の左側にあったとしましょう。常に90度左側に首をねじって咀嚼しているという異常な状態が何年も続くと考えただけで、どのような恐ろしい事が起こりそうか想像がつきますよね。片方の肩にかけるカバンを避けてリュックタイプのカバンを子供に持たせておられるお母様ならすぐに理解して頂けると思います。
頂く時には良く味わって、しっかり噛んで、作って下さった方に感謝しながら食べる事も大切です。
子供達のためにも、食事とおやつの時には必ずテレビを消して下さいね。

フッ化物はいつまで使うか

フッ化物はその種類や摂取の仕方を変えながら、基本的には一生使う方が良いでしょう。
4歳、あるいは遅くとも6歳くらいから何らかの形でフッ化物の使用を開始します。虫歯になってからではなく、完璧に予防してしまうために何ともなくても使うようにしましょう。
小学校低学年の間は親が食生活の管理をしてあげる事ができますが、高学年で塾に通うようになって、塾の帰りにコンビニで毎晩缶コーヒーなどを買うような事態になったら要注意です。反抗期にもなってきて、なかなか親のいう事を素直に聞いてくれませんが、とにかく、はみがき粉でも何でも良いのでフッ化物の応用を続けます。
成人してむし歯リスクの安定期に入っても、はみがき粉などで継続してフッ化物の摂取を続けた方が良いでしょう。成人した後は歯周病のリスクが強くなってきます。お母様の努力のおかげで、虫歯で苦労した経験の無い子供は大きくなってから、どうしてもブラッシングがおろそかになって歯周病になってしまいがちです。
老人になって歯周病が進行して、歯の根っこの方が歯ぐきより上に見えてきてしまうと、そこが非常に虫歯になりやすくなります。治療が不可能な部位であることも多く、まさに「歯医者泣かせ」な状況となります。