残念な事に、今月はインプラントのオペが多いです。多いといっても3回だけですが。お三人共6番に1本だけ埋入という小さな手術です。手術の時間は長くありませんのでお客様の苦痛は少ないと思います。
ただ、手術までの下準備(術前計画)にはかなりの時間を費やしています(術前検査、診断用ワックスアップ、ステントの作成、CTの撮影、等々。ラボに籠ったり、パソコンの前に座り込んだりして色々な事をやります)。
術前に計画された位置にインプラントが埋入できました。(これは近年新しく開発されたインプラントなので、より一層の機能美が感じられます。マニアックな話でスミマセン。)
約15年前の英保歯科はドクターが3人もいる「大手歯科医院」でした。若い代診の先生に虫歯治療の患者さんをお任せして、自分はインプラントの手術を月に8回程度行っていました。
しかも一人の患者さんに複数のインプラントを埋入するような大きな手術が多かったのです。
その頃に学会発表などを積極的に行い、インプラント学会の専門医を取得しました。全く噛めない患者さんが何でも嚙めるようになるので、「インプラントは最高の治療方法だ」と感じていました。
私は、皆さんがが思っておられるほどの「ストイックな完璧主義者」ではなく普通の人間なのですが、常に上を向いて「もっともっともっと良くありたい」と思い続ける傾向は強いと思います。インプラントの大きな仕事しながらも、インプラントよりもっと優れた治療方法、究極の治療方法がないかを考え続けていました。「もっと簡単で、もっと素晴らしい結果が出る治療方法がないものか?」と。
ありましたよ。その治療方法は「予防歯科治療」だったのです。
現在の英保歯科でのインプラントの位置付けは「残りの歯、周囲の歯を守る」ための戦略になっています。インプラントを使えば前後の歯を削らずに済みますし、周囲の歯の負担を減らす事ができます。英保歯科では予防歯科のためにインプラントを使うのです。
開業してから20年以上も経っているのに、「年間1000本の手術実績!」などと自院のインプラントの本数を自慢している歯科医院はダメな歯科医院です。だって、歯を残す努力や、お客様の歯を予防する努力が足らないから、そんなにたくさんのインプラントを使うようになるんでしょ?
英保歯科では年々インプラントの手術数が減っています。いつかは「年間0本の手術実績!」と自慢できるようになりたいですね。
6歳の男の子のお母様「奥歯(乳歯)が茶色くなってしまったので、ひどくショックです。真ん中の子で油断したせいか、朝食後の歯ブラシをちゃんとしてあげていないのが原因だと思います。朝日幼稚園に通っています。」と涙ぐんでおられました。素晴らしいお母様ですね。この子は幸せです。
私「朝日幼稚園なら在園時の食生活はキッチリされているはずです。この歯は咬み合わせの面の溝が茶色くはなっていますが、予防歯科治療をきっちりお受けになっておられますし、今お伺いしたご家庭での食生活習慣では、虫歯になる事は非常に考えにくいので、経過観察をすれば心配ないと思いますよ。」と説明しました。
安心してもらえたようです。大丈夫ですよ。
我が家の話をしましょう。
私の長男の左下の乳歯の1本が生まれつき変で、まるで虫歯になっているように歯の一部が欠けた感じで生えて来ました。
そこに食べ物の色素が沈着するので、だんだん茶色くなってきて、パッと見た目が「虫歯?」という風になってきました。
彼はその後、神戸友の会幼児生活団という、幼稚園に相当する教育機関に通うようになりました。そこでは年に1回歯科健診がありました。予防歯科に熱心な女性の歯科医師がキッチリと健診して下さいました。
毎年毎年、その歯について「乳歯の虫歯が1本あります。早めに治療してもらって下さい。」との指摘を受けていました。歯が欠けて茶色くなっているのですから、「虫歯」という診断になるのでしょう。
子供の虫歯の原因は食生活習慣、食育にあります。歯磨きがメインではないんです。
妻とは「我が家では5歳まで砂糖甘い物を極限まで控えているので、欠けている歯であっても、絶対に虫歯になったりしないはず。このままフッ素などを応用して様子を見よう。」と、相談して決めました。
そして、この乳歯が無事抜けてしまうまで、何事も無く使う事ができました。削っていた方が問題が起こっていた可能性は多々あります。
英保歯科では「茶色いから。黒いから虫歯」ではなく、食生活習慣や、過去の経歴などを加味した時間軸で物事を考えるようにしています。
「白いかぶせが割れた」という事で、久しぶりにドクターのアポイントでお見えになった英保歯科のファミリーのお客様。
拝見すると以前かかっていた歯科院でやったもらった、保険の白いかぶせ(詰め物ではなく、クラウンという王冠状の形態のもの)が壊れた状況でした。
被せが割れたり外れたりする時には、急にポコッと取れるのではなく、内部の接着剤の一部が剥がれが徐々に進行して、最終的に外れてくるのです。つまり歯と冠の間にすき間ができて、そこに虫歯菌が侵入して虫歯になって外れてくるのです。上の写真で、外れた歯が茶色く虫歯になっているのがわかりますか?
金属の冠<自由診療のジルコニアセラミックの冠<保険の白い冠(CAD/CAM冠を含む)の順に歯を削る量が多くなります。横の健康な歯と比べて、「どれだけ削ってあるか」が分かりますよね?
自由診療では型を取る材料にシリコンなどを使うのでピッタリ合う冠を作る事ができます。単に冠の材質だけの違いではなく、自由診療は色々な事が「スペシャル」なのです。このお客様にはこれらの事を説明をして、この歯を自由診療のジルコニアセラミック(8万円税別)で修復させて頂く事となりました。
接着不良のプラスチックの土台と内部に入っていた金属ピンを30分以上かけて慎重に取り除きました。そして、虫歯になっていた部分を、う蝕検知液で何回も染めながら慎重に慎重に削っていきました。しかし、これでもまだ完全には悪い所を取り切っていません。ここからは英保歯科の腕の見せ所です。「まだ抜かないで。その歯は残せるかも知れません。」です。頑張ります。
保険でできる白い詰め物(コンポジットレジン)は、防湿さえきっちりやっていれば、全然悪くないのですが、保険でできる白いかぶせ(HJCや今話題のCAD/CAM冠)には、まだまだ問題が多いと思います。「安くて白い」ので受けが良いのですが、被せてから数年後から十数年後にはその歯自体が無くなっている可能性があります。保険の白い被せを(CAD/CAM冠を含む)を勧めて下さる歯科医師には、是非「先生の歯にもそれを使いますか?」と聞いてみて下さい。
そもそも、予防して虫歯にしていなければ、あなたがこのようなストーリに関わる必要はありません。予防歯科治療を受けて、なおかつ、子供は「5歳までだけは砂糖甘い物を徹底的に控える」事が、人生に歯の悩みを持ち込まない最短の方法なのです。
平成20年に All on 4 という方法(神経を避けてインプラントを故意に斜めに傾けて埋入し、4本のインプラントで12本から14本の歯を支える方法)で、下顎の総入れ歯を固定式の歯に替えたお客様。10年経って精密検査を行いましたが、問題なく経過しています。私もお客様も一安心です。
彼女「もう10年にもなるんですね。私の主人は食事の最中にしょっちゅう入れ歯を外しては掃除して、また戻して入れてはと、見ていてもとっても不便そうです。私はインプラントにしてもらったお陰で本当に快適です。10年前に投資したお金は価値があったと、心から思います。」との事。
私「有難うございます。○○様は本当に丁寧にブラッシングをして下さっていますし、年に3回のメインテナンスも欠かさず10年間来て頂いていますので、経過が良好なんですよ。」
この写真は衛生士の先生のプロケアーを受ける前の、来院時のお口の中の状態です。清掃が難しい構造なのですが、インプラントのシリンダーが銀色にキラッと光っている事からも、お家で時間をかけて丁寧に磨いて下さっている事がわかりますね。
お金も時間もかけてインプラントにして良かった点も多いのですが、もしも予防歯科治療で自分の歯が残せていたら、もっと清掃も簡単で、何もかもがもっと快適だっただろうと思うと、少々悔しい感じもします。
やっぱり、予防が一番簡単なんですよ。
歯は石ころのような単純な物だと思われるかも知れませんが、むしろもっと高度に生物学的な組織なのです。歯の根の表面には歯根膜という細胞があって、この歯根膜細胞が、その歯と、その歯を支えている骨の両方を正常な状態に保つために非常に大切な役割を果たしているのです。外傷で抜け落ちてしまった歯を乾燥させずに牛乳に漬けて持って来て下さいとお願いしている理由はここにあります。乾くとこの細胞が死んじゃうんです。
歯を支えている骨(歯槽骨といいます)は、歯根膜細胞が無くなると「そうか、もう歯が無くなったんだから自分も必要ないはずだ。」と勘違いしてやせ細ってしまいます。奥歯では歯を抜いただけで歯槽骨の幅が1/3になってしまうと報告されています。
インプラントが充分に幅の広い骨の中に埋入されれば、しっかり長持ちしそうな事は素人の方にもわかると思います。
そのために最近は「ソケットプリザベーション」といって、抜歯と同時に人工骨や特殊なメンブレンを設置して、歯槽骨が減少するのを防止する処置が有効であると報告されています。
つまり、インプラント治療は歯を抜いて暫くしてから開始するのではなく、歯を抜く時から始まっていると思って下さい。
歯を抜いてからネットでインプラントセンターの良さげな所を探して行ってみるというのは、かなり「素人臭い」流れだと言わざるを得ません。
かかりつけの歯科医院でしっかり相談して、「歯を抜いた後はどうするのか」を決定してから抜歯をしてもらって下さい。入れ歯にするんだったら抜きっぱなしで大丈夫ですが、インプラントや審美治療に繋がるなら、抜きっぱなしは後で苦労しますよ。
歯を抜くと同時にコラーゲンや人工骨、特殊なメンブレンを設置して骨を誘導してゆきます。
通常なら痩せてしまうのですが、かなりの幅の骨が維持できました。
インプラントを埋入するホールを形成してもまだ、周囲に充分な骨があります。ソケットプリザベーションのおかげですね。
しっかりとインプラントが埋入できました。
サッカー・野球・バスケット、アイススケート、ヨットなどなど・・・。
子供の頃から本格的に練習するクラブが増えていますね。
日曜日には早朝から練習や試合などで、父兄がお世話をされている事と思います。
クーラーボックスにはポカリスエットや麦茶や水などが入っていると思いますが、世話役の代表さんは毎回必ず500mlか1ℓの牛乳を1本買って、クーラーボックスに入れておいて下さい。ストロー付きの小さな牛乳はダメです。開封にハサミがいりますので。
アクシデントが起きて、歯が欠けたり、抜けてしまったりした時にはその牛乳を開封して、歯の欠けた部分や抜けてしまった歯を直ちに牛乳パックの中に放り込んで歯科医院に持って来て下さい。(水道水はもちろんの事、生理食塩水や専用の歯牙保存液よりも牛乳の方が有効である事がわかっているのです。ビックリでしょ?)泥だらけの時は、可能なら、サッと牛乳をかけ流して泥を軽く落としてから放り込んで下さい。自信が無かったらそのままでも良いので一刻も早く牛乳に漬けて下さい。抜けた歯を絶対にティッシュでゴシゴシ拭いたりしないで下さい!!!!!歯根の表面の細胞をダメにしてしまうのです。
幸い牛乳を使う必要がなかった日は、誰かが持って帰って飲めばいいのです。歯が抜けてから慌てて牛乳を買いに行っていては、歯根の表面の細胞が死んでしまって手遅れになることがあります。歯は顔面と同時に怪我をする事がほとんどですから、額や鼻から出血していたりしたら牛乳を買いに行く事にすら気が回らない場合も多いはずです。
たった150円の保険ですが値千金ですので、必ず習慣にして下さい。お知り合いのスポーツ関係の父兄や先生方にも周知徹底して下さい。学校でもママ友仲間でも話題に上げて、この事を教えてあげて下さい。
人生の先が長い子供達の歯は、私達大人の歯以上に大切なのですよ。
2年前にインプラントを含め、総合的な治療が完了したお客様。レントゲン検査や歯周精密検査を行って全体が安定している事を確認しました。
治療前は歯が少なく咬みにくそうですね。向かって左下の 一番奥に写っている hopeless な歯以外は治療を行うことにしました。
3本のインプラント、顕微鏡を使った根管治療、ジルコニアクラウンなどを行い、とりあえず2年間が経過しました。
「治療完了直後は1日3回以上磨いていたが、最近は朝食後1回だけしか歯を磨いていない。」との事。夜寝る前のブラッシングを必須として、もう少ししっかりとセルフケアーをするようにお願いしました。
「妻にも、あれだけお金をかけて治療したんだからしっかり磨くようにと怒られるんです。」との事。
心の中で「お支払い頂いた治療費の事だけでなく、私が自ら削ってお渡しした、私の魂の事にも気持ちを巡らせて下さい。」とつぶやきました。
私達歯科医師の何割かは、少なくとも私は、「命と魂を削りながら」お客様の歯の修復に取り組んでいます。これはお金に換算できないものなのです。
予防歯科に真剣に取り組んでおられる英保歯科のファミリーのお客様のために歯科医師としての私の人生を捧げる覚悟をした以上、保険治療であっても自由診療であっても同様に真剣に取り組みます。
私の治療を受けた事があるお客様の中には、私が言っている事を解って頂ける方が少なからずおられると確信しています。
※今回話題に挙げる「被せ(かぶせ)」とはキャップのような形状のもので、「詰め物」とは違います。
奥歯にも、保険で白い「被せ(かぶせ)」ができるようにはなったのですが・・・。CAD/CAM冠というカッコイイ名前なんですが、保険のCAD/CAM冠は悲しい事にプラスチック製なんです。プラスチックでも強度を出すために、セラミックや金属に比べて被せの厚みが必要になります。つまり、ご自身の歯を大量に削り取らないといけないので、この「保険の白い被せ」は英保歯科では推奨できかねるというお話をした事があります。
しかしながら、少なからずの歯科医院がこれを「ビジネスチャンス」と捉えているようで、「保険で白い被せができるようになったんですよ!銀歯の被せを保険で白い歯にできますよ!やらないと損ですよ!」みたいな事を言っているようです。先の事を考えない、短期間の美容の面ではメリットがあるのかも知れませんが、英保歯科の自分の大切なお客様には、はっきり言ってやりたい仕事ではありませんね。
関連する記事が載っていましたので、下にリンクを貼っておきます。参考にして下さい。
白くて自然 歯科医が推奨「CAD/CAM冠」のメリットと疑問(日刊ゲンダイDIGITAL)
この記事の中では「神経を取ってある歯なら、(削る量が膨大になっても関係ないので)この保険のプラスチックのCAD/CAM冠にしても良いでしょうが」といった事が書いてありありますが、私(英保先生)から見ると「神経が取ってあるからといって削り倒してもOK」という理論は成り立たないと思います。いかなる場合でもたくさん削った歯の寿命は短くなるのです。
このように考えますので、英保歯科では「保険の銀歯の被せ」か「ジルコニアセラミックの被せ」の二者択一になってしまいます。
どうしても白い被せにこだわって、かつ、先々までその歯を残したいのなら、自由診療のセラミックのCAD/CAM冠を選択なさるのが賢明だと思いますよ。
「歯石がたまってきたから、そろそろ歯医者に行かないと・・・。」それで本当にいいのかな?
4年間も歯科衛生士の先生の治療を受けていないお口の中って想像できます?きっと、英保歯科のファミリーの皆様には考えられない事でしょう。
糖尿病専門医の西田先生は「歯周病は糖尿病とそっくりな所があります。初期は自覚症状がない点と、一度進行してしまうと元には戻れない点です。」と説明されています。
歯石は「歯垢のステージ5」である事は以前にもお話しました。歯石は悪玉菌(歯周病菌と虫歯菌)の核シェルターのようなもの。歯石で完璧に守られた歯周病菌はLPSという有害物質を大量に産生し、歯茎と骨が「音もなく静かに(自覚症状無しに)」破壊されます。
更に恐ろしい事には、生きた歯周病菌とLPSが周辺の毛細血管から体内に入り、全身の血管を駆け巡ります。ですから歯周病が脳梗塞や心筋梗塞の原因になるのです。
歯のケアーを怠ったために脳梗塞になって介護を受け、歯も少なくなって流動食しか食べられない老後の自分の姿が想像できますか?
「歯科衛生士の先生の予防治療があなたの人生を守ってくれる」という表現が大げさでないことが理解できますか?
英保歯科では歯科衛生士を「先生」付けで呼んでいますが、その理由は、ここにあるのです。彼女達は「命と人生を救う(予防する)仕事」をしているのですよ。
兵庫県三田市の歯科医院 予防歯科を主軸に顕微鏡やルーペによる精密治療・MI接着修復・MIインプラント治療を提供 ラバーダムやZOOなどの防湿装置使用率100% i Mix(改良型3Mix法)を開発