平成は私にとって意義深い年号となりました。多くの事に気が付き、学んだからです。
私は平成7年に33歳で英保歯科を開業しました。そしてあっという間に23年が過ぎて56歳になりました。33歳の人間が56歳になるんですね。たった23年で。
平成7年、当時33歳の若造でしたが、資金的な親の援助は一切受けず、一人で全額の借金を背負っての船出でした。理想に燃えて最高級の治療設備を揃えた事もあって、借金は巨額となりました。その借金返済のために生活費が不足し、アパートを借りる事すらできず診療所に寝泊まりし、新聞はおろかケーブルテレビの契約さえ諦めて、爪に火を灯す様に節約して「患者さんのために」と頑張ってきました。
妻はそんな「貧乏」な私と結婚してくれました。彼女が歯科医師の家庭に生まれ、彼女自身が歯科医師であったため、歯科医師の社会的使命や経済的な実情を理解できたのだと思います。それからも夫婦で「生活は質素に、診療は理想を求めて」で頑張ってきました。生まれてきてくれた子供達にも物質的な贅沢をさせる事はありませんでした。
「事業を大きくする事が成功者の証である」という世間の常識に流されて、常勤歯科医師3人という大所帯に持って行った事もあります。そういった価値観(大きい事はいい事だ)の人から見れば当時の私は「成功者」への道を歩んでいるように見えただろうと思います。今から思えば「愚か」でした。バカとしか言いようがありませんね。
平成28年に起きた、ある出来事がきっかけになって、「本当に必要」は何かを深く考え始めるようになりました。そして全てに「断捨離」を決行しました。ただでさえ「無駄な事」が嫌いな私が本当に徹底して「断捨離」を行ったのですから、一緒に働いてくれているスタッフはさぞかし戸惑ったと思います。激変を受け入れてくれた古株のスタッフには特に感謝しています。
究極まで断捨離を進めると「不必要」がいかに多いかが見えてきます。私の場合、気が付けば7割を捨てたり、やめたり、離れたりしていました。つまり結果的には7割が不必要だったという事です。現在も進行中です。
しっかり頭を使って(哲学的に熟慮しながら)断捨離をやっていくと、逆に、「本当に必要、本当に大切」が自然に見えてきました。そのほとんどは「お金では買えない、又は、お金だけでは手に入らない」という事にも気が付きました。
そうそう、数日前、ずっとお付き合いのある出入りの業者さんの一人が「私も趣味のベースギターをたくさん処分して、最高の物1台だけに買い替えました。ここ2年ほど、英保先生の表情がドンドン明るくなってくるのを見ていて、やっぱり自分も断捨離だと思って。」と言ってくれました。
明日から新しい年が始まります。
来年はも「お大切」を目標に頑張りたいと思います。キリスト教で言う「愛」は Love というよりむしろ「お大切」だそうです。
これは俗人、凡人の私には簡単な事ではないですが、頑張ろうと思います。
そして「大人のお客様の老後と子供のお客様の人生を守る」ために、気力の続く限り、予防歯科の啓蒙と歯を守るための治療を頑張っていくつもりです。
今年1年間、有難う御座居ました。皆様の優しさに包まれ、お陰様で幸せな歯科医師人生です。心から感謝しております。
英保裕和