カテゴリー別アーカイブ: 最重要!予防のキーポイント

口腔洗浄機を使用する際の留意点(閲覧注意)

口腔洗浄機の有用性を目の当たりにしてすっかり惚れ込んでしまった私は、20人以上のお客様にしろえのジェットウオッシャーをお勧めして使って頂いております。

そのような状況の下で2カ月以上が経過し、「これはちょっと(悪い意味で)予想外の歯肉の変化だな。口腔洗浄機も万能では無いようだ。色々と注意して使って頂く必要があるな。」と感じる場面を体験しておりますので、注意喚起の意味も含めて(緊急に)アップしておきます。

昨年末と比べて随分トーンダウンしてしまって申し訳ないのですが、ここ2カ月間で色々と経験したので告知させて頂きたいのです。

1強力な水流によって歯肉退縮を誘発する事があるノーマルモード以下で使う
2長時間使い過ぎると歯肉退縮を誘発する可能性がある歯と歯の間の食べかすをザっと洗い飛ばす程度の使用とする
3強力な水流はインプラント周囲の歯肉付着を破壊する可能性があるインプラントの周囲は「弱」で洗う程度とする←非常に大切!
4「弱」では歯と歯の間の歯垢を洗い流せない事がある従来通り、あくまでも歯間ブラシやフロスの使用を基本とする
5「弱」では歯頚部の歯垢が残りやすくなる従来通り、歯ブラシで優しく丁寧に歯垢を落とす事を基本とする
口腔洗浄機を使用する際に注意すべき5つのポイント

歯科医師や歯科衛生士などの「お口のケアのプロフェッショナル」以外の方が口腔洗浄機をお使いになる時には「過ぎたるは及ばざるが如し」「過信は禁物」である事を理解して頂きたいのです。

最近の口腔洗浄機の性能は非常に高いので、強力過ぎる水流が仇となるという事を理解して、上手に使って頂く必要があると感じております。

では、「口腔洗浄機は無用の長物か?」と聞かれたら、「そんなことはありません。凹状になっているブリッジの部分や、深いポケットの部分など、歯ブラシや歯間ブラシやフロスでは清掃が不可能だった部位を洗浄する事ができる道具なのですよ。今までの清掃方法に加えて、上手に、賢明に使って下さいね。」とお答えしたいと思います。

以下に「どのような場所に対して口腔洗浄機が有効か。また、どのような場所に対して注意して使うべきか?」といった一例をお示しします。

実は赤矢印の部分の歯は抜いてあり、ブリッジが入っています。ブリッジの義歯部分の自然観を出す為に、ここでは「オベートポンティック」という手法が使われています。(ちなみにこの写真は仮の歯の状態です)
上の写真の最終のセラミックブリッジの構造はこんな感じ。このオベートポンティック部分は無垢のジルコニアが歯肉に接触しています。ここは口腔洗浄機を使って優しく洗うのが正解なのです。
このように、深い歯周ポケットに入り込んだ食べかすや歯垢は口腔洗浄機で洗い流すのが正解です。
歯が1本も無い方に入れている、インプラントの上部構造の内側。ここの清掃も口腔洗浄機の力を借りると良いでしょう。(黄色と緑は口腔内のインプラントに接続される部分。)赤の部分を洗浄機で洗って頂きたいのです。
上の写真の上部構造の緑と黄色矢印が接続されるインプラントのヘッド部分。インプラント周囲の歯肉は弱いので、ここに強い水流をあてるのは禁忌(ダメ)です!
インプラント2本で支えているブリッジ。緑の所にインプラントが入っています。赤の所はオベートポンティック。赤の所の下を洗浄機で洗って頂きたい。緑の周囲は「弱」で洗う程度にする。(ちなみにこの写真は仮の歯の状態です。。)
綺麗なジルコニアセラミックの歯が2本並んでいます。緑と黄色の下にはインプラントが入っていますので、「弱」で優しく洗うように。その間の部分も洗いましょう。
上のセラミックの歯の部分を外すとこのようになっています。ビックリでしょ?インプラント周囲の歯肉の付着は決して強くないので、ここをストロングモードなどで洗ってはダメです。強力な水流で無茶苦茶すると、インプラント周囲炎になってしまいます。

このような経験をすると、「弱い水流で除菌効果のある」パナソニックのナノクレンズ機に期待が出て来ます。様々な改良が為されたナノクレンズ機の新機種が発売されるのが楽しみになってきました。パナソニックさん、頑張って下さい。

口腔洗浄器の威力を見た。(閲覧注意)

歯ブラシや歯間ブラシやフロスではセルフケア(家庭で自分で清掃)が不可能な状況でも、シロエの口腔洗浄器を使ってもらったら家庭で清掃ができて、炎症と痛みが完全に消退した例を示します。

「歯肉が痛い。普段から歯間ブラシを使って清掃しているが、今回はなかなか痛みが消えない」との主訴で来院されました。
「どれどれ・・・。ちょっと拝見しますね。」と、私。

歯と歯の間の深い場所に食べかすが詰まっています。こりゃ痛いわ。歯間ブラシやフロスではこの深い場所の食べかすを取り出すのは(物理的に)不可能だ。歯間ブラシを通しても、この食べかすの上をかすめるだけしかできないよね。
探針という歯科用の器具でほじくり出した食べかす。出てくる、出てくる。
ウヒャー・・・・。一応全部ほじくり出したけど・・・。どうやってセルフケアしてもらおうか・・・。

こちらのお客様にこの写真を見せながら、シロエの口腔洗浄器を紹介して、購入して頂き使って頂く事にしました。口腔洗浄器ならば歯間ブラシやフロスが届かないような、深い場所でもしっかり洗い流す事ができますからね。

シロエの口腔洗浄器を毎日使い始めて約2週間後の状態。炎症も痛みもすっかりなくなって快適だそうです。仮に修理しているセラミックのブリッジに対しては、いずれ抜本的な修理をしなければなりませんが、ひとまずはこれで大丈夫です。

口腔洗浄器は我々の想像を超えるポテンシャルを持っている可能性があります。従来なら諦めて抜歯していたような歯でも、口腔洗浄器を使って、家庭でのセルフケアを真面目にやって頂く事によって保存できる可能性があります。

口腔洗浄器、凄いね!

「最後の10年分の余力」が残せる歯の予防を

前回大阪で万博が開催された、1970年の男性の平均余命って何歳ぐらいだと思いますか?
大体、75歳位だと思いませんか?

正解は69.31歳だそうです。何と半分の男性は60歳代で死んでいたんですね。

今が1970年なら、私の余命も残りたった8年しかない事になります。

一方、2022年の平均余命は男性が81.05歳、女性は87.09歳だそうです。随分と長生きになりましたね。

これを頭において、予防歯科について考えてみましょう。

1970年なら、死ぬまで、日常の歯の手入れが自分自身で(若い頃と同じように)ちゃんと出来ていたはずです。

2023年の今は(80歳を超えた頃から様々な体と頭の機能が低下するので)最後の10年位は歯の手入れがちゃんとできなくなってしまうと考えられます。

若い人には想像もできないと思いますが、80歳を超えると、一生懸命に若い頃と同じように歯の手入れをやろうとしても、体や頭がついてこないのです。しかも唾液量も減るので、ますます虫歯や歯周病になりやすくなってしまいます。

そのようになると、どうしても80歳を越えた頃から「歯がどんどん悪く」なっていってしまいます。これは仕方が無い事なんです。

この最後の10年の間に歯がどんどん悪くなってしまっても、「死ぬまで何とか苦労なく噛める」ようにするためには、70歳の頃に(今後歯の状況が悪くなっても大丈夫なように)ある程度の余力・余裕を持った状態を保っておかなければなりません。解りますか?これが今日私が言いたい事なんです。

80歳の時にこれが噛めなくなる事が想像できますか?現実には、日本人にはそういった人が本当に多いのです。

そのためには60歳の頃にはどうにか何でも苦労なく噛める状態、40歳の頃にはほぼ問題のない状態、20歳の頃に至ってはほぼ虫歯ゼロの状態でなければならないのかも知れません。

どんなにボロボロになっても、あなたは一生その歯と付き合っていくしかないのです。歯は売っていませんから。お金を出して買えるのはしょせんインプラント止まりです。

インプラントの上端の写真です。この構造の上にセラミックの歯をネジ留めするのです。何でも噛めるようにはなります。
お金と時間と手間をかけて、手術まで受けてインプラントを入れても、しょせん自分の歯に戻せるのでは無いのです。
若い頃から自分の歯を予防して大切にすれば「タダで最高」のものを維持できます。

70歳の終わりに「最後の10年分の余力」が残せるような、余裕のある歯の予防を目指して下さい。その位に思っておいても、人間は弱くて愚かなものですから、丁度、何とかなる位になるのです。

若いうちから歯を大切に、いたわって使って下さい。80歳を過ぎてから死ぬまでの生活が楽になりますよ。

過信は不幸の始まり

ウクライナとロシアの戦争が続いていますが、You Tube でロシア軍の戦車などが爆破されるリアルな映像を見る事ができます。凄い時代ですね。
Ukrainian Ground Forces destroy Russian tanks with precision strikes

「あの戦車の中にも家族のある人間が乗っていて、その人間が一瞬で死んでいるんだ。」と思うと、とにかく一日も早く戦争が終結して欲しいと願うばかりです。

プーチンは「ロシア軍はとても強いので2日でキーウを陥落して戦争が終わる」と思っていたようですが、実際は思っていたほど強くはなく、その過信が不幸を引き起こしています。

過信は禁物といえば・・・。久しぶりに歯の話をしたいと思います。

以前このブログで「人生100年時代がリアルになってきた今、本来の歯の耐用年数を遥かに超えて長期間歯を使わざるを得ない状況になっている」というお話をした事があります。

さて、

①人間の歯は(いたわって使う事無く)何も考えずにガンガン噛んでも85年とか持つほど強いものなのでしょうか?
②歯科治療を受けた歯、特に日本の保険歯科治療を受けた歯の強度は、思っているほど強いものなのでしょうか?
③削りまくった歯や、神経を取った歯の強度は思っている程強いものなのでしょうか?
④保険証を持って歯医者に行ったら、何度でも何度でも歯を修理させる事ができて、全ての歯を一生持たせる事ができるのでしょうか?

え、そんな事、思った事も考えた事も無いですって?

では、ここでいくつかの事例を挙げますので、これらを見ながらご自身で考えてみて下さい。大切な自分の体の事だから、是非自分で考えてみて下さいね。

70歳。かみ合わせも完璧で虫歯も歯周病も無いのに突然✖の歯が「噛むと痛く」なったそうです。
歯が中央からまっ二つに割れています(1)。割れた隙間にニンジンが詰まっています(2)。

この歯は4番という歯で、食べ物を最初にかみ砕くのに使います。なんでもバリバリ噛み続けて70年。そりゃ壊れる事もあるよね。抜いてインプラントという話をしたら「晴天の霹靂でショックです。」との事。私は「本当に気の毒だが、ある意味当然といえば当然の should。70年間も(容赦なく)使ってきたのだから。」なんて思ったりもします。

80歳。6番を抜いてその前後の歯に持たせる形で保険のブリッジをしてもらっていたのですが、奥歯に痛みが出て来ました。
歯の〇で囲んだ所が砕けて割れています。
本来は1のような形の根っこなのですが、2の部分が割れて3にズレちゃってます。

大きく削った歯、特に神経を取った歯は弱いね。この場合、いよいよ抜いて入れ歯かインプラントか放置ですが、80歳といっても一般的には後10年の余命があると思われますので、どうしたものか悩んじゃいますね。現実には抜いて放置となるのだろうか・・・。それでもこの方は8020は余裕で達成しているので、後10年ならそんなに困らず行けるかも。

まだ45歳。✖の歯が「噛むと痛い」との事。神経を取った歯の根の周囲の骨が溶けています(1)。
神経を取った歯にはまれに(日本ではしばしば)この病巣ができます。怖いけどこれが現実なんです。
神経を取った歯は弱い。上の写真の✖の歯は割れてしまっていました(1)。
もう抜くしか仕方がありません。
つるつるだった金属のクラウンがザラザラになる程に「容赦なく」歯を使っておられます(2)。

本人さんにこの写真を見せながら「あなたの歯の使い方」の問題点を詳しく説明させて頂きました。この方の人生はまだまだ先が長いからね。20年先で頭を抱えるようになって欲しくないから。

如何ですか?歯に関しても「過信は禁物」と解って頂けましたでしょうか?

プーチンは自軍が強いと思い込んで多くの兵士を失いました。兵士は徴兵や傭兵で補充すれば新しく入る事は入りますけれども、歯はどうでしょう?

自分の歯や、歯医者が修理した歯や、神経を取ってしまった歯の強度を過信して酷使し、自らとどめを刺してしまい、その結果その歯を失っても(兵士のように)新しく入れる事はできません。代わりがないのです。

柔らかいものばかり食べろという訳ではありませんが、歯をいたわって大切に使い、硬いものを噛む時にも(急激にバリッとやるのではなく)ゆっくりしたスピードでかみ砕くなどの工夫をして「自分の体(歯)は自分で責任を持って守る」ように努めて頂ければと思います。

30年以上歯医者をやっている私の経験からの見解ですが、インターネットの出現によって人々のストレスが増加したので、就寝中の食いしばりや歯ぎしりによって歯を破壊している人が(近年)激増していると感じています。

御自身の歯を200年ピカピカで持たせる必要はありません。100年という長き一生に渡って、虫歯の治療や修理を繰り返しながらでも何とか死ぬまで(ほぼ)全ての歯を維持できれば、それで大・大成功なのです。

歯にも疲労破壊が起きます

今日は土曜日。一週間で一番忙しい日で今日もフルブッキング状態です。でも、午前中に80歳の女性のお客様から「歯がひどく疼くので、何とか今日診てもらえませんか?明日は日曜日だし。」という電話がありました。彼女は20年以上年3回の予防にずーっと真面目に通院されている方です。「先生、何とかしてあげられますか?」とスタッフ。「ロイヤルファミリーメンバーだろ。当然診させて頂きますよ。」

という訳で、特別に私のお昼休みの時間に来て頂く事にしました。これで今日も昼抜きかも知れない。頑張ろう・・・。

お口の中を拝見すると・・・。

痛みの原因は虫歯ではなく、歯が割れてしまっているせいですね。80年も使っているのだから、そんな事が起きても当然ですね。黄色で囲んだ所にクラックライン(破折線)が見えます。
下の歯が噛み込んで歯を割る方向に力がかかります。このベクトルが80年間もかかり続けているんだ。そりゃ割れる事もあるよね。
やむを得ず削ってみたのですが、内部の深い所まで破折線が存在しています。割れ目が神経まで到達してしまっているのですから、そりゃ「突然痛い」はずだわ。
こちらは40歳代後半の男性の歯。7番が抜けたまま放置しているので手前の歯の負担が増大しています。黄色の矢印のあたりをバキバキに壊してしまっているのが解りますか?歯は滅茶苦茶な使い方をすれば壊れるものですが、具合が悪くなるまでそんな当たり前の事すら意識できないのが人間。でも、誰かが説明したり教育したりする事によって簡単に気が付きます。人間はバカじゃないから。

歯は噛んだり喋ったり笑ったりする時に使う道具です。一生歯で苦労する事無く過ごしたいならこの道具を85年以上間使い続ける「工夫」が必要です。いたわって大切に使わないといけません。いたわらずに使って歯を壊してしまってから買おうと思って、いくらお金を積んでも売ってくれる人はいません。車や家と違うのです。

「硬い食べ物が大好きで思いっきりバリバリやっちゃう。やめられないわ。」「夏は氷をバキバキ噛むよ。長年やってる。」「前歯で栓を抜く事ができるんだ。凄いだろ!?」←自己責任で好きになさったらよろしいが、後悔のないようにね。

現代人は歯を90年近く使おうとしています。縄文時代の人間の倍以上の期間です。宝物のように大切にして、いたわっていたわって使っても、それで丁度良い位なんですよ。若いうちに虫歯にするなんて、如何に恐ろしい事をしているか解って頂けます、よね?

歯を抜いたまま放置すると・・・。

「歯を抜いたまま放置すると咬み合わせに悪影響を与えますよ。」との説明を受ける事があります。

確かに、歯を抜いたまま放置してしまうと、その抜いた歯と咬み合う位置関係にある歯がニョキニョキと伸びてきてしまうのです。一対のカップルなので、相手が無くなるとそれを探して伸びてくるんですね。

青い点々で描いた所の歯を抜いて放置していました。上の歯が伸びてきて下顎の粘膜に当たって止まっています。
カップルの相手を失った一番奥の歯が、相手を探して伸びてきています。大きな段差が出来ている事が解りますか?
一番奥(左側)の歯に注目。一見、下に銀歯があって上に白い歯があるように見えますが、実は下の歯は無くて、上の歯がこーんなに伸びてきているんです。銀歯が下顎の歯肉に咬みこんでいるのが解りますか?
その銀歯が噛み込んでしまっている場所の歯肉が周囲に比べて白っぽくなっています。歯肉の「角化」という現象が起こってしまっているのです。

歯肉に歯の鋭利な部分が慢性的に当たる状況を放置した場合、最悪の場合にはそこの歯肉がガンになったりする事があります。不潔な口腔内や、喫煙や飲酒の習慣がそのリスクを助長します。

こういった事例からも解るように、定期的に歯科医院に行って予防衛生管理をしてもらったり、歯科医師の精査を受ける事は「人生の質を保つ」為にも役立ちます。

最後に。いつものセリフですが、しっかり予防して、歯を失うような事にならなければこのような心配からも一生無縁です。やっぱり予防が一番ですね。

下顎の奥歯の内側も、磨こう

昨日「上顎の一番奥歯の外側を意識して磨こう」という話をしましたが、今日は「下顎の奥歯の内側も意識して磨こう」という話をします。

「何となく歯の調子が悪い。ここ数年間は歯医者に行っていません。1日2回歯磨きをしています。」と、教えて下さった30歳代の男性。どれどれ。

下顎の奥歯の内側に磨き忘れがあります。ベロがあるので、よっぽど意識して歯ブラシを当てに行かないと、このようになります。

ベロが接触している場所は意識して歯ブラシを当てに行かないと当たらないのです。

今日、彼に私が行った治療は「岡山大学式、術者磨き」だけです。歯ブラシだけを使ってドクター(私)が、この部分も含め、お口全体の歯垢を完璧に落としてあげて、スッキリ感を経験してもらうのです。フロスなどは使いません。彼にとっては予防歯科教育とモチベーションの最初のステップだからね。

「岡山大学式、術者磨き」をしたらこのようになりました。歯肉の中に隠れていた歯石が露出してきました。

正しく歯ブラシをしただけですけど、如何ですか?」とお伺いしたら「何か、全然違う感じになりました。スッキリしてビックリです。」との事。

この後、彼はこれらの写真を見せられながら40分間に渡り、予防歯科の重要性を(私から)説教されてしまった事は言うまでもありません。皆さんが経験されたようにね。

素直で頭の良い彼は、私の話を聞いて、予防歯科の重要性を100%理解できた様子でした。

これでまた一人の若者の人生を変える事が出来ました。ヨカッタ、ヨカッタ。

上顎の一番奥の歯の外側を磨こう

結構真面目に歯磨きをしている方でも磨き忘れしやすい部位があります。それは「上顎の一番奥の歯の外側」なんです。

理由は単純。上のそこのすぐそばには頬っぺたの粘膜があるので、よっぽど意識して歯ブラシを当てに行かない限り自然には歯ブラシが当たらないのです。死角っていうやつですかね。

普段からしっかり磨いてくれている若者ですが、上顎の一番奥の歯の外側(普通、磨き忘れになる所)に穴があいています。トホホ。

歯科衛生士の先生が予防治療の時にこの虫歯を発見してくれました。

麻酔をして削り始めてみて、ビックリ。

予想以上に進行しています。虫歯菌を染め出す赤い液を付けて確認したのですが、ご覧のようにまだ虫歯菌が感染した部分(赤く染まっている部分)があります。少なくとも赤く染まった部位は削り取らないといけません、トホホ。
虫歯菌を完全に除去し、ZOOを使って完全に防湿し、コンポジットレジンで修復しました。

神経を取らずに修復を完了する事が出来ました。ヨカッタ、ヨカッタ。

予防の為に歯科医院に来ていなかったら、「痛くなってから歯医者に行って、神経取って、銀歯の被せ」というお決まりのパターンになるところでした。

早期に発見してくれた衛生士の先生に感謝、ですね。

甘いカフェオレを毎朝飲んだ結果・・・。

全く虫歯にした事が無く、フロスも毎晩している成人女性。コロナの影響か予防での通院が途絶えていたのですが、1年振り位に「歯が痛い」との事で歯科医師のアポイントで来院されました。

「虫歯になる訳ないけどな。」と思いながら念のためにレントゲンを撮って顎が外れそうになりました。3本も虫歯ができおり、しかもその内の1本は神経に到達する勢いです。

「レントゲン検査の結果、黄色い所が、神経に近い所まで虫歯になっている様子です。」と説明してもにわかに信じて頂けませんでした。

彼女:「フロスも毎晩しているし、写真を見ても綺麗だから、この中が虫歯だなんて信じ難いです。だいたい、今まで虫歯になった事無いし。」

私:「食生活習慣で何か大きく変わった事が思い当たりませんか?」

彼女:「そうですねぇ・・・。何も変わっていないと思うけど・・・。」

私:「とにかく私を信じて治療を受けて頂けませんか?。それに、結構な痛みが出ているのだから何か治療をしないとダメでしょう?ステップバイステップで写真を撮って、後で説明させて頂きますから。」

彼女:「解りました・・・。お願いします・・・。」

小さな小さなドリルで穴を開けてみました。レントゲンで確認していた通り、虫歯になっています。
内部の象牙質が溶けて無くなっています。
虫歯菌に侵されてべちょべちょに軟化した象牙質が出て来ました。うへー。
普通なら「神経取って銀歯のかぶせ」ですが、英保歯科では神経を残す努力を惜しみません。i MIX を使います。


私:「(これらの写真を見せながら)こんな感じでエライ事になってましたよ。」

彼女:「写真を見せて頂いて状況がよく解りました。実は、2年程前からスティックタイプの甘いカフェオレを毎朝飲むようになったんです。飲んだ後、歯ブラシもブクブクうがいもせず、そのまま仕事に行っていました・・・。それが悪かったのだと思います。」

私:「それですね!結果の解っている人体実験しているようなものですよ。ずっと無垢の綺麗な歯だったのに、そのカフェオレのメーカーを訴えてやりたい気分だよ。」

彼女:「でも、他にも砂糖が入っている食品は沢山ありますし、私の摂り方に落ち度があったのですから。」

私:「タバコには税金が掛けられている上にパッケージに健康被害の警告文を書く義務があるよね。真剣に予防歯科に携わっている歯科医師から言わせると、お菓子のメーカーにも同じようにして欲しいと思うけどね。」

彼女:「(英保先生、熱くなってる。)私、明日から無糖の紅茶にします。予防歯科にも年に3回ちゃんと通院してプロケアやフッ素コートを受けます。」

私:「それが賢明ですね。是非そうして下さい。」

皆さんもこのような落とし穴に落ちないように、しっかり気を付けて下さいね。

オーバーブラッシングによる弊害

普通の硬さか、むしろ柔らかめの歯ブラシを使って優しく丁寧に磨いて頂きたいのですが、性格が真面目過ぎたり、清潔志向が強すぎると、ついつい力を入れてゴシゴシ。

一生懸命磨き過ぎる傾向がある方の歯肉。どこに問題が起こっているのか解りますか?
歯ブラシでこすり過ぎて、黄色の所の歯肉の皮がむけちゃっています。(もう一度上の写真を見返してみて下さい。そうして頂くと良くわかると思います。)

このような磨き過ぎの事を「オーバーブラッシング」と呼びます。口臭を気にし過ぎて磨き過ぎると、皮がむけて出血するので口から「血の匂い」がするようになります。その匂いが気になって更にゴシゴシやって、益々口から血の匂い(これも口臭と言えます)をさせてしまうという、ウソみたいな悪循環が起こってしまうのです。特に若い女性に見られる現象です。

同じ方の上顎の奥歯。ピカピカに磨いてありますが、オーバーブラッシングで歯肉がすり減らされて下がってしまっています。(本来はオレンジのラインまで歯肉があったはずなのですが・・・。)

オーバーブラッシングで歯肉が減ると(上の写真のように)歯根が露出してしまうので冷たい水がしみ出します。知覚過敏です。「冷たい水がしみる。虫歯にしてしまったのかも?」と思ってますますゴシゴシやってしまって、ますます歯肉が下がって、ますます水がしみるという、ウソみたいな悪循環が起こってしまうのです。

これにジフまがいの安価な歯磨き粉を使うと、もうお手上げです。「虫歯になっているはず。だって、物凄くしみるから。」と、初診でお見えになった方に「虫歯はありませんよ。」と言っても「こんなにしみるのに虫歯が無いはずがない!」と、信じて頂けない事もしばしばです。

そして、これだけオーバーブラッシングしている方ても「フロスは邪魔くさいので、ほとんどしません。」という人が多いのです。そして本当に虫歯や歯周病にしてしまうのです。

歯ブラシとフロスを正しく上手に使いましょう。解らない事があれば担当の歯科衛生士の先生に気軽に尋ねてみると良いでしょう。