「歯科一般」カテゴリーアーカイブ

ブリッジの利点・欠点

歯を失った時には何らかの方法でそこに歯を入れるのが一般的です。方法としては、入れ歯、ブリッジ、そしてインプラントから選択するようになります。
入れ歯や銀歯のブリッジは保険が効くので安価です。それは利点ですね。

欠点について、当院で10年以上前に装着したブリッジの経過を例えにお話します。

6番という大臼歯を抜歯した後、そこに(義)歯を入れて欲しいとのご希望がありました。1本のインプラントを使うか、ブリッジにするか相談の結果、お客様はご自身の意思でブリッジを選択なさいました。

このブリッジは3本分の歯を前後の2本で支えるので、支えの歯の負担が1.5倍になります。

緑色の所の歯は抜いてしまってありません。前後の歯を支えにしてブリッジという義歯を入れて調子よく使って頂いていたのですが、ついに支えの歯の根が割れてしまいました(黄色で囲まれたところ)。


そして支えの歯は過去に神経を取ってしまっていたので、もろく割れやすくなっています。
その結果、装着したブリッジは10年以上良い感じで使えていたのですが、ついに歯根破折が起こって寿命が来てしまったのです。

黄色の点々で囲まれた部分が歯の根っこの外形。この歯は根っこが2本あります。赤い所は手前の方の根っこが割れてしまって、開いた口ばしのようになっている事を示しています。

この辺がブリッジという修復方法の、避け難い欠点なのです。後ろの支えの歯を抜いたら、ついに入れ歯か2本のインプラントで修復という事になります。悔しいけど、これが現実なのです。

やっぱり予防が一番ですね!

8番(親知らず)は7番を破壊する事がある(閲覧注意)

親知らずが生えようとする力は強大で、時に手前の歯の歯根や側面を破壊してでも生えようとします。今日はその実例をお見せします。

レントゲンで、8番(親知らず)が7番の背面に食い込んで、破壊しているように見えます。
黄色が8番の一部。赤は7番が欠けたようになっている部分です。
仕方が無いので8番(親知らず)ではなく、7番を抜きました。
抜いた7番の背面にはポッカリと大きな穴が・・・。

10代後半には親知らずの存在を確認し、必要に応じて抜いておかないとこのような事になりかねません。

まあ、この場合はしばらく経つと、残した8番が抜いた7番の位置の付近まで降りて来てくれます。なかなか完璧な場所には来ませんけどね。

今日は久々に歯医者のブログらしい内容だったな。やれば出来るでしょ?私にも、歯の話が。

う蝕検知液の使用はMUST!

私がお客様の虫歯の治療をさせて頂く時には、防湿装置と「う蝕検知液」を必ず使うようにしています。今日はう蝕検知液についてご紹介しますね。

保険の銀歯の下側の歯に穴があいてきています。
銀歯を外してみたところ。いつもの事なので別に驚きません。
7割方、悪いところを削りました。雑にやると神経(青矢印)に当たっちゃうので、この辺から「う蝕検知液」を使って慎重に削って行きます。
う蝕検知液という赤い液体を塗って洗い流したところ。このように虫歯菌に感染している部分が赤く染まります。う蝕検知液を使えば虫歯菌の取り残しが無くなるし、歯を削る量を最小限に抑える事ができます。
神経に当たらずに、虫歯菌に感染している部分を完全除去する事ができました。う蝕検知液って凄いでしょ?(白い丸は神経ギリギリの所。でも何とか神経は見えていません。寸止め成功です。)
詰め物のベース(基礎部分)を重合収縮の少ないコンポジットレジンで作りました。これから削って型を取り、セラミックオンレーというものを作って行きます。

こんな風にこだわってキチッと治療をすると、素人目から見ても、結果が良さそうに思うでしょ?

親知らずの移植症例(術前から生着まで)

1年前に行った移植症例の経過を一緒に見てみましょう。

再根管治療で一旦は治癒させた右下7番(赤)ですが、再度根尖病巣(黄)ができてしまい、抜歯止む無しと判断しました。
抜歯予定の7番(赤)の後ろの骨の中に親知らずが隠れている(黄)ので、7番を抜いた穴からこの親知らずを引き出して、7番の所に移植する(緑)事にしました。
移植して深めに挿入しました(緑)。
サイズや形の違う歯を移植した(緑)ので、歯の周囲に骨が無い空間があります(オレンジ)。
2週間後に歯の中央に小さな小さな穴(緑)を開けて iMix を挿入します。
3週間後にその穴をレジンで封鎖します(緑)。
術後約1年後。移植した親知らず(緑)ですが、元々そこにあった歯のように美しい状態ですね。
移植した歯はしっかりと骨に囲まれて安定しています(オレンジ)。根尖病巣もありません(青)。親知らずを抜いた所にも骨ができてきました(緑)。

どう思われますか?インプラントより良さそうでしょ?
とりあえずこれで一安心ですが、長期的に安定して使って頂く為には今後の経過観察と定期的に歯科衛生士の先生によるメインテナンスを受けて頂く事が必須となります。

歯肉の異常所見と急性白血病

こんな経験があります。
Aさん「口の中が腫れて1週間前に耳鼻科に行ったら『抗生剤を出すからそれで様子を見るように』と言われたのですが一向に良くならないので『ひょっとして歯周病?』と思って来させてもらいました。」
私:「どれどれ・・・。✖%△◎!! Aさん、すぐに紹介状を書きますから、今から○○病院に行って下さい。午後で受付が閉まっていても『英保歯科から緊急なので診てもらうように言われた』と言って受け付けてもらって下さい!」
Aさん「わかりました。」

本当はオレンジ色の線まで歯が見えているはず。歯がほとんど隠れるほど歯肉が腫れています。

○○病院からの返信では「ご指摘の通り、血液検査の結果、白血病と判断致します。血液内科のある△△大学病院に搬送します。」との事でした。

Aさんは普段から英保歯科に予防のために定期的に通院して下さっていたので、過去の口腔内写真や歯周病検査との比較でこのような正確な判断ができたのです。その様な過去の正常時のデータが無かったら、口腔内を見慣れている歯科医師の私でさえ先の耳鼻科の先生と同様の判断になっていたかも知れません。
かかりつけ歯科医を持って定期的に通院していると、思わぬ重病の発見に繋がる事さえあるのですよ。

ステルス虫歯を探知せよ!

定期的な予防治療に通院していると、虫歯の早期発見に繋がります。
お母様が毎日の仕上げ磨きの時に発見できないような「ステルス虫歯」であっても、歯科衛生士や歯科医師ならピピッと探知して発見しますよ。

お母様:「子供が時々右下の歯が変と言うのですが、虫歯は無いように思うし・・・。」
歯科衛生士:「このグレーがかっている部分の内部で虫歯が進行している可能性があります。歯科医師にチェックしてもらいますね。」
私:「虫歯ですね。次回治療をしますのでお家で良くお話してあげて下さい。『注射される』とか『ドリルで削られる』とか『痛いけどちょっと我慢したらすぐ済む』とかいったネガティブな言葉は絶対に使わないで下さい。ポジティブな内容の話をしておいて下さい。」

ステルス虫歯の実際と、その治療の手順を写真で説明しましょう。

グレーで囲まれた範囲の歯の色が何となく暗いのがわかりますか?
黄色の所には歯の溝があるのですが、そこから内部に虫歯菌が入ったのです。
開けてビックリ(我々には分かっているのでビックリしないのですが・・・。)!内部にはポッカリと大きな虫歯が出来ています(オレンジ矢印)。
小児であっても防湿装置ZOO(オレンジ矢印)を使用して、コンポジットレジンによる完璧な接着治療(緑矢印)を行いました。

ズキズキ痛み出してから慌てて手当たり次第歯医者に電話して見知らぬ歯医者に行って、怖がって泣き叫ぶ子供をスタッフ数人がかりで抑えつけ、注射して歯の神経を取る・・・・。←昭和スタイルですね。
このような事は、予防治療のために通院するのが常識の英保歯科ではあり得ません。それに、虫歯治療は私一人でやっているので、抑えつけるためのスタッフなんかいませんから・・・。

・・・悪しからず。

親知らずを抜かずに放置すると・・・。

親知らずを抜かずに放置していた為に手前の歯(7番)に神経に達する虫歯ができていました。これは耐え難い痛みだと思います。

黄色=親知らず。赤=大切な12歳臼歯(7番)が虫歯になっています。緑=固着した歯石。
そのレントゲン像。黄色=親知らず。赤=12歳臼歯(7番)の虫歯の穴。青=この歯の神経の入り口。こりゃかなり痛いはずですよ。

こうなる前に親知らずを抜いておくべきだったね。今となってはもう7番を抜く以外に方法が無いのでは?
そうそう、7番を抜いて8番を移植する事も考えられますね。
皆さんならどうされますか?

接着歯科治療を成功させる3つのポイント

接着歯科というキーワードで検索して英保歯科のHPを訪問して下さる方が非常に多い事からも、皆さんがそれだけ接着歯科治療に興味と期待を抱いて下さっている事がわかります。有難い事です。

でも、接着治療は特別な治療方法ではありません。例えば、どこの歯科医院でもやっているコンポジットレジンという白い材料を歯に詰める治療方法(先生が時々ピッ、ピッと光を当てている、例のやつです)がありますが、あれは典型的な接着歯科治療です。

それでは私達、接着歯科治療認定医が行う接着とは何か違いがあるのでしょうか?それは単に「接着の質に対するこだわり」だけだと思います。

質の高い接着(=長持ちする接着)を実現するには3つの要素があります。

①様々な接着剤の組成や特性を熟知して「正しい場面に正しく使う」
②接着する面を「完全に清掃」して、プライマーなどの「表面処理を完璧に」行う
③必ずラバーダムやZOOなどの防湿装置を使用し湿度を下げて「パリパリに乾燥した表面」に対して接着操作を行う

これって建築や工業に携わっている理系の人や趣味でアクセサリーを作ったりしている方なら「なるほど。そりゃそうだわ。」と思って頂けるほどシンプルな要素ですよね。

接着歯科の成否の原因は先生が「わかっちゃいるけど邪魔くさいなァ。まあこの程度でいいや。」と思うか「も~、何がなんでも絶対に完璧な接着をしたい!」と拘るか、それだけの違いではないでしょうか。

その接着の質の違いが、その治療をいつどこでやってもらったかさえ忘れ去られてしまうような5年後、10年後に現れてくるのです。すぐには違いや良さがわからないのがまた面白いところです。まるで夫婦関係みたいでしょ。

自由診療でリカバリー中

今日の午前中は9時から14時までの5時間で4人のお客様の治療をさせて頂きました。4名共自由診療の複雑な治療で、アポイントの時間がお一人1~2時間と長く大変なのですが、歯がドンドン奇麗になって行くと治療をしていても達成感と充実感があります。

上の前歯。古くなったセラミックの被せを外してみたら・・・。
リカバリーできるかな?
3カ月かかってここまで修理できました。ここに奇麗なジルコニアセラミックの歯を被せて行く予定です。

自由診療はその名の通り、使用する材料や機材の制限なしに自由に治療をする事ができます。知識も腕も材料も惜しみなく投入する事ができるのです。

工業製品でも建築でも、最高の材料と最高の職人を使って時間をかけて丁寧に作れば、平凡な作品とは全く異なる物となります。歯の治療も同じなのです。

不可能を可能にはできませんが、それでも「保険診療」とは一線を画す、それが「自由診療」なのです。

なお、虫歯にしてしまったり、美容目的のためだけに歯を削ったりすると、歯の貴重さに気が付いてから慌ててどんなにお金と時間をかけても、決して元の無垢の状態には戻せないという事は肝に銘じておいて下さい。

保険のブリッジを外してみたら

最初にお断りしておきたいのですが、今回の話は「保険のブリッジは良く無い」とか、「インプラントにしておいた方が良かった」とか、「自費のセラミックのブリッジなら長持ちしたのに」という話では全くありません。誤解の無いようにお願いします。その様な事をお話したいのでは無く、予防をして自分の歯を大切にする事がいかに大切かという事をお伝えしたいのです。

さて、平成25年から英保歯科にお見えになって以来、予防歯科の重要性に気付かれたお客様がおられます。最近70歳を超えられましたが、積極的に予防に取り組んでおられます。

英保歯科のファミリーになられる以前の話ですが、他院で奥歯を抜いてもらって、保険のブリッジを入れてもらったそうです。当時のお話をお伺すると、前後の歯を削って保険のブリッジを入れるという「1択」だったようです。

その奥歯の(保険の)ブリッジ(緑の部分)が外れかけているとの事で相談を受けました。前の歯科医院で黄色の部分の歯を抜き、前後の健康な歯をぐるっと削って、ブリッジという義歯を入れてもらったそうです。ちょうど橋みたいな構造なので「ブリッジ」と呼びます。
そっと外してみたら、手前の歯はポキッと折れてしまっていました(赤矢印)。後ろの歯は被せの中が虫歯になっていました(オレンジ矢印)。
ポッキリ折れた歯が被せの中に残っています。歯3本分を前後の2本の歯だけで支えているのですから、時にはこのような事が起こっても不思議では無いですね。

保険のブリッジは治療費が安価でとりあえずの機能回復ができますので、短期的には悪く無い選択肢だと思います。しかし、歯を抜くと決定した時点でインプラントという選択肢も一応は説明して、最善の方法を一緒に考えてあげる「優しさ・思いやり」が必要でしょう。
それ以前に、歯を抜いてしまったからこのような悩みが出る訳で、抜くしかないと判断しても、「他の歯科医院で治療を受けたら、ひょっとしたら何とかこの歯が残せないものか?」という次元まで考えてあげる姿勢があっても良いのではと思います。

予防をして虫歯や歯周病にしなければ、こんな事からも無縁です。これ以上シンプルでベストな解決策が他にあるでしょうか?