英保歯科は開業当初、英保歯科・矯正歯科という屋号でした。しばらくして優秀な矯正専門医が三田で開業してくれたので、矯正は専門医にお任せしようと決心し、それまで勉強した矯正の知識と技術に封印する覚悟を決めて、屋号を今の英保歯科に変えたのです。
で、まだ矯正をやっていた20年ほど前の話です。フラワータウンに住んでいる大学生で、一生懸命英語を勉強している女の子が「将来、英会話のスキルを活かして海外で活躍したいので、(日本みたいに歯並びが悪いままで許されるような社会ではないので)歯並びをちゃんと直しておきたいのです。」と言って当院を訪れてくれました。
まずは予防歯科の重要性をしっかり説明して、年に3回のメインテナンスに必ず来院し、絶対に虫歯にしないようにと、まあ、教育しました。それから矯正治療を開始しました。
右の犬歯が骨の深い位置に埋まっており、しかも水平になって存在しているという超難症例でしたが、頑張って、どこの歯科医に見てもらっても恥ずかしくないように完璧に仕上げました。
その彼女は大学を卒業後に夢かなって香港に住み、キャセイ・パシフィックのCAとして数年間活躍し、エアラインからキャリアアップした後はパートナーにも恵まれて、現在は東京に住んでいます。
先日、その彼女から英保歯科に電話がありました。「『矯正のリテーナーに違和感が出て来た。東京から飛行機で三田に行くから、どうしても英保先生に診てもらいたい。』との事です。」と受付のスタッフから報告がありました。
私は受付のスタッフに「光栄な事だけど、わざわざ飛行機代を払ってまでウチに?まあ、実家に寄れるだろうから、悪くないだろうけど。」と答えました。
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私 :「わざわざ東京から飛行機で来てくれたの?」
彼女:「ハイ。どうしても英保先生に診て欲しかったので。メインテナンスは東京で年に3-4回受けています。」
私 :「どれどれ。虫歯は1本も無いし、素晴らしいね。流石〇〇さんだね。違和感のあるリテーナーは適切に対応しておくね。」
彼女:「有難う御座います。私、英保先生の事を『第2の父親』的な存在だと思っているんです。今朝、実家の両親にもそう言ってから出かけてきました。」
私 :「おお、それは光栄な事やな。まあ、人生しっかり楽しんで下さいね。」
彼女:「ハイ!」
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その彼女ですが、海外やエアラインといった華やかな世界に身をおいたからこそ見えてきたものがあったのでしょうか?今後は福祉や子育て支援などの(より深遠な)分野で自分の能力を発揮してみたいと考えているそうで、資格取得の為に猛勉強をしているそうです。
長年歯医者をやっていると、悲しい事や辛い事も少しはあるけれど、こんなにジンと来る事を言ってもらえる事や嬉しい事が沢山あります。でもそれは私が More や Bigger を優先しない生き方のスタンスだからこそ、自然に天から舞い降りて来てくれるのだろうと思っています。