言葉の断捨離

最近は「ヤブ医者」という言葉をあまり聞きませんが、ひょっとしたら(日本お得意の)差別的表現に選ばれたのでしょうか?

ヤブ医者と言えば・・・。

約25年前、開業当初のある朝、いつものように玄関のドアに鍵を差し込んでいると、背後にあるけやき台小学校から子供の声で「ヤブ!」と大声の罵声が聞こえて来ました。驚いて振り返ると私が歯の治療をした事のある男の子の顔が見えました。

当時、私はまだ33歳でした。歯科医師として色々な意味で経験不足で至らない部分が多かったとは思うのですが、今同様に一生懸命頑張ってはいたつもりです。「親があの子に『英保歯科はヤブや。』と言ったから小学生が『ヤブ』なんて言葉を覚えて私に浴びせたのだろうな。」と思い、かなりのショックを受けました。

あれから25年間、毎朝8時過ぎに診療所の玄関の鍵を開けるのですが、その時に必ず「けやき台小学校の方からヤブという声が聞こえてこないだろうな。」と一旦学校の方を見て様子を確認してから鍵穴に目を落とすようになりました。どうやらその時のショックが相当大きくて、心的トラウマになってしまったようです。

深く考えずに放った一言が、相手の心を深くえぐってしまう事があります。きっと私自身も何回もこの過ちを犯しているはずなのです。

今となっては、これは私にとって反面教師となる良い経験だったと感謝しています。毎朝自分に「言葉には気を付けよう。」と言い聞かせるリマインダーになっているのですから。

「教養とは、ひとの気持ちがわかるようになることである」養老孟司

自分の教養が足らないうちは「ベラベラ喋るより、黙っている方がマシ」だと思っています。ですから私は、モノとコトの断捨離に加えて「言葉の断捨離」にも努めています。

私って、男のくせに喋るのが好きだから、なかなか難しいけどね。