50歳前後の世代の非常に真面目な患者さんが「私は過去に虫歯をいっぱい作って、銀歯だらけで、自分自身の事が恥ずかしくて仕方がありません。今の子供たちは虫歯が無くて羨ましいです。」とおっしゃいました。
昭和40年頃は子供の歯と体にとっては最悪の時代でした。今は発がん性のために発売禁止になっているチクロやサッカリンなどをバンバン飲まされていましたし、下手したら「味噌っ歯(茶色に溶けてしまった乳歯がずらっと並んでいる状態。味噌のように見えるのでこのように呼んだ)の子供は可愛い」なんて訳のわからない事を言っていたのですから。
社会も親も、戦後の何も無い時代に比べて「物」が手に入るようになった事がうれしくて、体や心、それに歯の健康には興味が無かったのでしょう。
平成に入ってからでさえ、「八重歯(犬歯が外側に存在してしまっている状態。非常に問題の多い不正咬合で一生苦労する。外国ではドラキュラの歯と言われます。)がかわいい」なんて訳のわからない事をいう人がいましたね。今現在、雑誌の表紙のスマイルで八重歯の人は皆無ですね。「あの人は八重歯で気の毒」というのが正しい発想です。
昭和40年頃に子供だった方は、歯が悪くても、あなたやあなたの親が悪いわけではありません。社会の振り子が物欲と消費欲に振れていた時代だったので仕方がないんです。これからベストを尽くして予防をしていけば良いのです。
自分や自分の親を責める必要はありません。今からでも遅くありません。前向きに予防に取り組みましょう。