保険のCAD/CAM冠の最大の欠点:歯を削る量が半端じゃない

お客様から「奥歯やし、贅沢せんでも保険の銀歯でええわ。」という言葉を聞く事があります。


保険の銀歯には、パラジウムという金属が使われています。昭和の時代にはロシアや中国から安価に購入できたパラジウムですが、時代が変わり、そのパラジウムは今やレアメタルとなり、輸出入が国と国との国力の駆け引きに使われるようになっています。
中国資本が東京都の焼き場を買収した最大の理由は日本人の亡骸の顎からパラジウムを取り出すためであろうという憶測があるそうです。私はあながち間違っていないと思います。

保険の銀歯は「ロストワックス法」という技術を使って、鋳造で一つ一つ手作りで作られます。工業系の人ならば、このことの価値や大変さが解って頂けると思います。保険の銀歯は熟練の歯科技工士さん達のみが為せる技なのです。
日本の歯科技工士学校は歯科衛生士学校同様に年々減少の一途です。歯科業界や歯科関連の職業に対する社会的評価が低いので魅力が無く、今はもう歯科技工士になりたい人がいないのです。理学療法士や看護師になった方が世間から「凄い・偉い」と思ってもらえるからでしょうか。職種に貴賤は無いはずなのにね。

最近は、保険の銀歯を作れる熟練の歯科技工士さん達の高齢化が進んで、後継者もいないので、もはや保険の銀歯を作ってくれる人が世の中から消えようとしています。

厚生労働省の役人は頭が良いので、問題が大きくなる前に(というか、現実には既にどうしようも無くなってきているので)パラジウムを使いロストワックス鋳造法で作られる保険の銀歯を諦めて、他の材料、他の作り方の被せに移行しようとしています。やむを得ない事でしょう。

それが最近ニュースなどでも言われている「朗報!保険でも白い歯ができるようになった。CAD/CAM冠という新しい技術です!」というヤツです。
この保険のCAD/CAM冠は金属でもジルコニアセラミックでもなくて、プラスチック製なのです。プラスチックで割れない強度を出そうというのですから、被せの厚みを分厚くしないといけません。即ち、大量に歯を削る必要があるのです。それでも噛む力でたわんで外れたり、中が虫歯になったりしてしまいます。しょせんプラスチックですから。

保険のCAD/CAM冠を入れる為に削った歯。機械がミリングできるように、全体に丸みを持った削り方にするので、それがますます削る量を大きくします。

英保歯科も日本にある歯科医院です。日本の歯科業界の現状や厚生労働省の方針に抗う事など不可能です。保険の銀歯の材料もレアになって、作ってくれる人もいなくなったので、英保歯科にももはや選択肢はありません。覚悟を決めてこのプラスチックのCAD/CAM冠に手を染めようとしてスタートしているのですが・・・。

保険のCAD/CAM冠用に削った歯。こんな風に削ります。歯を削る量が半端じゃないので、本当に嫌な仕事です。私は歯を守るのが好きなの。


英保歯科のお客様には今後は自由診療のジルコニアセラミックの被せをメインに使わせて頂こうと思います。1本10万円ほどしますが、長い目で見たら結局はその方が安上がりだから。大量に削ったせいで歯が弱くなり、先でその歯を失ったらインプラントを入れるのに50万円だしね。

私を信じてついて来て下さっている英保歯科のお客様ならば、私が説明したら必ずジルコニアセラミックを選択して下さると思います。理解して頂けるように頑張るつもりです。


「奥歯やし、贅沢せんでも保険の銀歯でええわ。」という価値観。
まるで若くてイケメンだった頃に遊び倒していた男が、中年になってブサイクになった頃に「そろそろ結婚でもするか。もうあの女でもええわ。」と言いいながら周りを見たら、かまってくれる女性など一人も居ない、という状況に似ているかも知れません

あって当然、いて当然、してもらえて当然と思わずに、あるだけで感謝、いてくれるだけで感謝という気持ちを持ちたいものです。