歯科の往診の光と影

一般的に、健康保険や介護保険の資金をある所に重点配分すれば、撒いたエサに集まるようにその界隈が賑やかになります。

厚生労働省は歯科医師が過剰である(と思っている)ので、要介護の方のおられる家庭や施設に往診に行くように「政治的に」「誘導」しています。
最近、多くの歯科医院がその「誘導」により往診をするようになりました。旨味が多いので往診専門の歯科医院も出現して、すでに供給過多の兆しがあり、いずれにしても、要介護の方には朗報だと思います。

今日の英保歯科での出来事。90歳近くになる男性が「前歯の差し歯が折れた」との事で、2年ぶりにお見えになりました。この男性は、鬱病を患っておられるお嬢様と2人暮らしで、「娘のためにも、しっかりしなくちゃ」と努められていた感じがあって、大変そうだなと思っていたのですが、今日お見えになった時には状況が変わっていました。
この2年間の間に、男性が認知症になって、むしろお嬢様の方がしっかりとして彼を英保歯科に連れて来て下さったのです。
拝見すると、前歯の差し歯が歯肉の深い所でポッキリと金属の土台を残して折れてしまっており、もしも、超音波切削機や顕微鏡などの器機が無い環境だと「抜くしかない」ような歯でした。つまり、往診だと「抜歯して入れ歯」という事になるのでしょうが、頑張って歯科医院まで連れて来て頂きましたので、顕微鏡や防湿装置ZOO、ファイバーコアなどの機器や機材を駆使して「何とか一生持つ程度(つまり10年位)」の治療をする事ができました。お帰りになる時には前歯に歯が入ってお嬢様も喜んで下さいました。入れ歯にならずに済みましたので手入れも簡単ですね。

往診で受ける治療と歯科医院で受ける治療が全く同等である事が理想ですが、実際には不可能です。

往診には良い点も沢山あり、助かっておられる方も山ほどおられるのは事実ですが、厚生労働省が過剰歯科医師を往診に誘導している事が「総合的に見て」良いのか悪いのか?

私にはわかりません。