インプラントは諸刃(もろは)の剣(つるぎ)※です。
※《両辺に刃のついた剣は、相手を切ろうとして振り上げると、自分をも傷つける恐れのあることから》一方では非常に役に立つが、他方では大きな害を与える危険もあるもののたとえ。
英保歯科ではインプラントを予防歯科の目的の為に使います。一例を示しましょう。
とびとびに2本の歯が無いので、その前後の3本の歯を支えにしてブリッジが(他院で)入れてありました。5本分の負荷を3本の歯が負担するので、その3本の歯のうちの中央が折れてしまいました。これ以上ドミノのように歯を失わないために、インプラントを使いました。
前医では、ブリッジを入れるために周囲の歯の神経を取って、大量に歯を削ってしまってあります。10年は持ったとしても、その後の問題は更に大きくなってしまいました。この患者様は「もしも前医がこの銀歯のブリッジを入れる時に、インプラントの選択肢も提示してくれていたらインプラントを選んでいたのに。」と、残念がっておられます。
上のインプラントの部分のエックス線写真を撮るとこのようになっています。骨の中のインプラント体は、白い歯のパーツの真下、ど真ん中に位置している事がわかると思います。
インプラントの白い歯の部分は特殊なネジで留めてあるので、何か問題が起こった時にはこのように「ネジを緩めて歯を外す」事ができるのです。この写真からもインプラントの真上に歯がある事がわかりますね。
この「歯の真下のど真ん中、3次元的ベストポジション」にインプラントを埋入する事がとても大切なのです。もしもズレると・・・。
①歯の位置もズレるので上下の歯のかみ合わせが理想的には作れない
②歯の位置とインプラントがズレていると見た目が不自然
③歯の位置とインプラントがズレていると歯間ブラシなどで清掃がしにくい
④不潔になって、インプラントの周囲に炎症が起きる
等々の問題が発生します。
1.インプラントの3次元的位置にこだわる
このような問題が起こらないようにするためには、事前に治療計画を綿密に立てて、ガイドシステムを使って計画した3次元的位置にインプラントを正確に埋入する事が必須なのです。
上の症例の術前。様々な検査をして、理想的な噛み合わせや見た目となるような歯の位置、サイズ等を技工士の先生と共に決定します。デジタルグラフィックスの力を借りて行います。
コンピューター上で決定したインプラントの3次元的埋入位置を手術時に現実のものにするために、マウスピースのような「ガイドシステム」を使うのです。
ノーベルガイドを使って計画と寸分違わぬ3次元的位置にインプラントが埋入されました。
インプラントの埋入ポジションの決定方法については、昨年度の日本口腔インプラント学会でも発表するほどのこだわりを持ってやっております。You Tube にもアップして全世界に向けて発信してみております。
2.手術の技術(腕と知識)にこだわる
私は日本口腔インプラント学会の専門医であり、代議員でもあります。それでも知識と技術のアップデートを図るためにノーベルバイオケア主催及び岡山大学インプラント科主催のインプラントの勉強会にそれぞれ毎月1回参加して、時には発表をして勉強を継続しております。
このノーベルバイオケアの勉強会では、オブザーバーとしてのポジションも与えられております。会場では若い先生方の良き規範となるよう努めております。
3.MI(低侵襲)にこだわる
例えばこの2本の普通に見えるインプラントですが、私の低侵襲治療への思いがいっぱい詰まっています。
スクリューを緩めてジルコニアの歯の部分を外すとこのようになっています。
私の手術におけるインプラントの埋入深度は”As shallow as possible, As deep as necessary”(Daniel Buser)つまり深すぎない埋入を心がけています。
本症例のエックス線写真。インプラントの長さもなるべく短いものを選びます。英保歯科では”As short as possible, As long as necessary”ですね。
万が一将来何か問題が起きた時にインプラントを「逆回転させて撤去」する可能性がゼロではありません。そのような時にも短いインプラントの方が体に優しい撤去が可能ですから。
4.噛み合わせの精度にこだわる
私は顎咬合学会の「噛み合わせ指導医」の資格を持っており、噛み合わせについては後輩の歯科医師に対して指導をする立場にあります。当然ながら噛み合わせの精度には人一倍のこだわりがあります。
2024年にIOS(口腔内スキャナー)Aoralscan 3 を導入しました。今までに増して、より一層精度の高い噛み合わせを提供します。
5.インプラントメーカーや骨造成等に使うマテリアルにこだわる
英保歯科では全てのインプラント治療に Nobel Biocare の製品を使います。インプラントは体内、骨内に直接埋め込まれて長期間留置されるものですから、エビデンスが蓄積され安全性の高いインプラントメーカーの製品を使う事が必須です。前述の症例で、インプラントに歯の部分を「特殊なネジ」で留めていると述べましたが、20年後、30年後にもそのような「特殊なパーツ」を供給し続けてくれるようなしっかりした会社の製品を使う事は必須だと考えます。ちなみに、あなたのインプラントがノーベルバイオケア社製かストローマン社製なら安心です。
6.技工士の先生の腕にこだわる
私が埋入したインプラント上にジルコニアの歯を作って下さるのは技工士の先生です。DDOは最も信頼できる技工士の先生方のチーム。
英保歯科の自由診療の歯は全てこのDDOで作られます。
7.ジルコニア製上部構造のディテールにこだわる
インプラントと上部構造(セラミックの歯の部分)との移行角度等は、細かい事のように思えて「技工士に丸投げ」される歯科医師も多いと聞きますが、私は角度や曲線について詳細にオーダーをかけます。
Emergence Angle, Emergence Profile, Critical Contour, Sub-critical Contour といった角度や曲線をエビデンスに合致させることが、インプラントを長持ちさせるために非常に大切なので、こだわります。
このようにこだわって作ってもらった上部構造は、ネジ留めした瞬間から歯肉と一体化するようになじんでいる事がわかります。
まとめ
以上のように、英保歯科では次の7つに非常にこだわってインプラント治療を行っております。
- インプラントの3次元的位置にこだわる
- 手術の技術(腕と知識)にこだわる
- MI(低侵襲)にこだわる
- 噛み合わせの精度にこだわる
- インプラントメーカーや骨造成等に使うマテリアルにこだわる
- 技工士の先生の腕にこだわる
- ジルコニア製上部構造のディテールにこだわる
この7つのこだわりに患者様の理解と協力が伴えば、一般的に難しいと言われる前歯のインプラント治療であっても、ご自身の歯と見間違うような出来栄えに仕上げる事ができるのです。一例を示しましょう。
この4本の前歯のうちの1本がインプラント、1本はジルコニアクラウンです。どれがインプラントかわかりますか?
ヒントはこちら。これは上の写真の左側2本のエックス線写真です。
多くのお客様が各地から英保歯科のこだわりインプラント治療を希望して、わざわざ三田市の英保歯科までご連絡して下さる事は非常に光栄に感じています。
ただし、重度の歯周病があったり、虫歯のリスクコントロールができていなかったり、奥歯がたくさん抜けたままのような状態では私がインプラント治療をしても良い結果は出せません。
遠方の方は①なるべくご自身のかかりつけ医からの紹介状をご持参下さい。②口腔内の状態によってはわざわざお越し頂いてもお引き受けできない事がありますのでご了解下さい。
英保歯科 院長 英保裕和