歯は石ころのような単純な物だと思われるかも知れませんが、むしろもっと高度に生物学的な組織なのです。歯の根の表面には歯根膜という細胞があって、この歯根膜細胞が、その歯と、その歯を支えている骨の両方を正常な状態に保つために非常に大切な役割を果たしているのです。外傷で抜け落ちてしまった歯を乾燥させずに牛乳に漬けて持って来て下さいとお願いしている理由はここにあります。乾くとこの細胞が死んじゃうんです。
歯を支えている骨(歯槽骨といいます)は、歯根膜細胞が無くなると「そうか、もう歯が無くなったんだから自分も必要ないはずだ。」と勘違いしてやせ細ってしまいます。奥歯では歯を抜いただけで歯槽骨の幅が1/3になってしまうと報告されています。
インプラントが充分に幅の広い骨の中に埋入されれば、しっかり長持ちしそうな事は素人の方にもわかると思います。
そのために最近は「ソケットプリザベーション」といって、抜歯と同時に人工骨や特殊なメンブレンを設置して、歯槽骨が減少するのを防止する処置が有効であると報告されています。
つまり、インプラント治療は歯を抜いて暫くしてから開始するのではなく、歯を抜く時から始まっていると思って下さい。
歯を抜いてからネットでインプラントセンターの良さげな所を探して行ってみるというのは、かなり「素人臭い」流れだと言わざるを得ません。
かかりつけの歯科医院でしっかり相談して、「歯を抜いた後はどうするのか」を決定してから抜歯をしてもらって下さい。入れ歯にするんだったら抜きっぱなしで大丈夫ですが、インプラントや審美治療に繋がるなら、抜きっぱなしは後で苦労しますよ。
歯を抜くと同時にコラーゲンや人工骨、特殊なメンブレンを設置して骨を誘導してゆきます。
通常なら痩せてしまうのですが、かなりの幅の骨が維持できました。