わが身を切るかの如く

神戸市北区からお見え頂いているお客様。いつも私のブログを読んで下さっており、御来院頂いた時にブログに関する話題で盛り上がっております。

「先日のなんちゃって治療のトピックですが、職人がどこまでこだわってやるかはその人次第ですよね。」と、ご感想を頂戴しました。いつも丁寧にご愛読頂き、ご意見も頂いて、心より感謝しております。

今日のブログの内容は、こちらのお客様との会話の中で生まれたものです。

歯医者は歯の職人や大工に例えられる事が多いのですが、「自分の仕事にこだわる」というレベルではなく、もっと高次元、倫理的な次元で物事を考えているはずですし、そういう自覚がないなら、そのように考えるべきです。

職人や大工は「モノ」を相手に仕事をしますが、歯科医師は「生体(つまり人間)という非常に神聖な『お大切』」を相手に仕事をしている、という点で異次元の「責任レベル」となり、それを遂行するためには高い「倫理観」が必要なのです。

歯科医師にこのような「価値観」があれば「患者はどうせ早くて安い方がいいんだろう」と決めてかかって、選択肢の提示も無しに保険ベースの「なんちゃって治療」を行ってしまう前に、お口の中の状況をしっかりと説明して、「自由診療になってしまいますので、〇〇円ほどの予算と〇〇か月ほどの期間がかかりますが、是非このようなちゃんとした治療をさせて頂けませんか?」とご提案すべきだと思うのですが、どう思われますか?

人様の歯を削る時には、「あたかも自分の腕をナイフで切っているかの如く」に思える感覚(やはり倫理観でしょうね)が必要です。岡山大学での私の講義の際にはこのフレーズを使って、学生達にしっかりと「本物の歯科医師とは何ぞや」を教育したいと思っています。