「手に職がある」と、どうなの?

先日、私が園医を務めている幼稚園に健診に行った時の事。年齢が上がるにつれて、虫歯にしている園児がちらほら出てきます。健診後の総評で園長先生とゆっくりお話する機会に恵まれました。

私:「私は33歳の時に三田で開業してから27年間ずっと、この地で予防歯科の普及に精一杯努力してきましたが、いまだに虫歯にしている子が残っているのを見て残念です。でも、私は今年還暦を迎えて、自分でも何十年も良く頑張ってきたなと思います。もう、園長先生のような若い世代の人にバトンタッチしてもバチは当たらないでしょう。そろそろ若い人達で頑張って予防歯科を普及して行って下さいね。」

園長先生:「イヤー、英保先生はお元気そうだから、まだまだ頑張って下さい。」

私:「皆さんはもう、責任を持って社会を良くして行かないといけない年齢なんですよ。いつまでも人にやらせようとするのはダメ(卑怯)でしょう。次の世代の人達で予防歯科の普及を継続してして下さい。」

園長先生:「・・・。でも、医療も商売だから、虫歯が無くなって患者さんが居なくなると売り上げが減って困るんじゃないですか?」

私:「『商売の規模が大きくなったり、売り上げが伸びるのが善』という人達に何回言っても信じてもらえないし、伝わった試しが無いのですが、我々「手に職」がある人間は、自分の腕と知識で人を幸せにして自分も幸福感を感じる事ができるので、『売上が伸びた』と自慢をする必要が無いんです。だから、収入が減っても(食べてさえ行けたら)不幸にはならないんですよ。解りますかねェ?多分信じてもらえないでしょうねェ・・・。え、解りますか!
だったら、青年会議所などでも年商や商売の規模を自慢するレベルよりワンランク上の会話が弾むようになると良いと思いませんか?」

園長先生:「確かにその通りだと思います。」

私:「是非、皆さんのような若い人達で日本の社会を良い方向に引っ張って行って下さい。」

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先日のブログに登場した筑波大出身のリケジョさんは先日「私は自分の研究を通じて世界中の人を幸せにしたいんです。お金じゃ無いんです。でも、いくら『お金じゃない』と言ってもこの価値観が伝わらない人が余りにも多い。」と嘆いていました。

私:「先生(彼女の事)の言っている事やその経験は、少なくとも私には良く理解できるよ。私は英保歯科のお客様2000人だけしか幸せにできないけど、それでも自分の知識と腕だけで2000人もの人を幸せにする事ができる。これって自分にとっては身に余る程に素晴らしい事だと思えるね。先生は地球上の全ての人を幸せにできる研究結果を出せる可能性があるのだから、もっと凄いけどね。先生ほどの能力と熱意と努力があれば、きっと夢は叶うよ。」と、彼女に話しておきました。

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私は(良心的で道徳的な)大工さんを心の底から尊敬する事が出来ます。彼らは自分の腕と知識で多くの人を幸せにしているからです。歯医者と相通ずるところを感じるから、尊敬できるのです。同様に、自動車の組み立てをしている工員や、安全な野菜を作っている農家の方なども、心の底から尊敬できます。

最近の私は「歯医者ほど幸せな仕事は無いな」と心の底から感じており、親が歯医者で自分が歯医者になる運命にあって良かったと思っています。そして三田のウッディタウンという素晴らしい地で開業する縁があった事にも心から感謝しています。