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「先生、下の顎にガンがアァァ・・・。」

下顎の内側に大きな「できもの」ができています。ガンじゃないかと心配するのももっともですね。でも大丈夫ですよ。単なる骨のふくらみができているだけで、悪性のものではありませんよ。

この骨の膨らみの原因も「はぎしり・くいしばり」なんです。信じられますか?でも本当なんです。
くいしばりは、咬み合わせ病の一つです。現代社会では、様々な要因から強いストレスがかかって、それを回避するために夜中や昼間のくいしばりや歯ぎしりが起こります。
寝ている間は意識がありませんので昼間の、何と3倍の力が歯にかかり、それが骨に伝達されて反応性に骨が膨らんでくるのです。
ご自身の下顎の内側に写真と同様の硬いふくらみがある方は、「はぎしり・くいしばり」を疑ってみるのが良いでしょう。

i Mix と接着治療で改善

中央の歯の根の周囲を取り囲むように、にグレーに写っている部分は細菌感染で顎の骨が溶けてしまっているんですよ。神経を取った歯はこのようになる事があります。神経が生きている歯は絶対なりません。ですから、予防しましょうね!

2年前に、ヒビが入っていて歯の周囲に炎症がある歯を、英保歯科オリジナルの特殊な治療方法(i Mix )と接着歯科とを使って抜かないようにチャレンジした歯です。

ひょっとしたらこれが治ったおかげで糖尿病や心筋梗塞にならずに済んでいるのかも知れませんよ。

困難な治療でしたが、2年経過してレントゲンを撮影したところ、歯の根の周囲の炎症が軽減して、骨が再生していました。
健全な骨の量が増加していますので、将来この歯の部位にインプラントを埋入するようになっても安心ですね。

頭が柔らかい若い歯科医師でこの治療方法に興味を持つ人がいたら教えたいんですけどね。

要経過観察歯って?

英保歯科で幼少の頃から予防をしているお客様です。彼の口の中には、今まで1本も削った歯はありません。30歳でこの状態。6歳で生えて24年間でこの程度の変化。悪く無いと思いませんか?職場の近所の歯医者で「虫歯なので、即、治療しましょう。」と言われたこの歯について、今後どうするか相談しました。私は「まだ削りたくないですし、その方がが結果的に長持ちすると思います。」と言いました。彼は「引き続き食生活習慣に留意して予防に努めます。」と言ってくれました。これが予防歯科的視点であり、この歯が「要経過観察歯」ですね。

学校健診で「要経過観察歯」って指摘される事がありますよね。
歯科医師から「虫歯になりかけだけど、まだ削らない方が良い歯」なんて訳のわからない説明をされたりして、どうしたら良いのかさっぱり理解不能ではないでしょうか。

一旦修復した歯は必ず接着剤の部分などが劣化して再度トラブルが生じます。ですから、歯科医師は、なるべくなら削ってつめるのは避けたいのです。(特に、防湿もせず、短時間で雑に行われた、誠実さに欠ける治療は「すぐに」ダメになります。)

「要経過観察歯」は、その家庭の食生活習慣や衛生習慣を考慮して、時間軸で今後起こり得る変化を考えつつ経過を見る状態です。生活習慣が改善すれば進行が極端に遅くなる可能性もあるし、生活習慣が望ましくない方向に向かえば急速に虫歯が進行するので、その時点では、諦めて削って埋めるような(特に子供の体にはやりたくない行為)を残念ながらやりましょう。という事なんです。

「茶色くなっていたら虫歯」で良いなら、6年間も歯学部に行って勉強しなくても、小学校低学年の子供でも診断できますよ。

このような経験があります。
有名私立中高の生徒さんなので頭が良いのでしょうか、本人と母親の二人で、茶色くなっている歯を見つけたらすぐ削って埋めないといけない虫歯と確信して疑わない方がおられます。塾通いなどで忙しいのでしょうか、歯科医院に電話した当日に絶対にアポイントを取りたい様子で、毎回「息子が歯がすごく痛いので今日どうしても診て欲しい。」と言われます。来院されると必ず、その茶色くなっている個所を指さして「ここがすごく痛い。」と言われます。「すごく痛い」と主張されたら私も反論しようが無いので、彼らの言う事を信じて、言われる通りに茶色い部分を削って埋める事をします。

本当にそんなに痛いのかな??真実は神のみぞ知る。ですね。

今この瞬間から禁煙を!

単身赴任中という事もあって、3年ぶりにお見え頂けた50歳代の男性。喫煙者です。
お口の中を拝見したとたん、口腔外科のある大きな病院での診断を受けて頂く事と、この瞬間からの禁煙を強くお勧めしました。

左の頬の内側に角化病変と、その一部には潰瘍に移行しそうな様相が認められます。大きな病院での病理診断などが必要ですが、これが悪性のもの(口腔ガン)でないことを祈るばかりです。


右側と比較すれば素人の方でも違いがわかると思います。右側は現在のところ異常が無いのですが、喫煙を続ける限り、ハイリスクのままということになります。
また、喫煙と飲酒を同時に行うと、ますますリスクが高くなります。

堀ちえみさんの一件で、皆さんが興味を持つようになった口腔ガンですが、悲惨なのは、顔は服の外に出ている場所ですので、手術の後の見た目や喋った感じが変化してしまう事なのです。社会生活が困難になって閉じこもりがちになったりします。

英保歯科の衛生士の先生方は、常に粘膜や舌をチェックして、少しでも異常があればドクターに報告してくれます。
年3回の定期健診は「口腔ガンの早期発見」にも非常に有効なのです。

機能美は普遍的

「飛行機に乗るたびに、右下の奥歯に激痛が出るんです」とのご相談で初めて英保歯科に来て下さったご婦人。右下大臼歯の神経が死んでしまって空洞ができているのが原因ですよと説明しました。飛行機で高く上がった時に周囲の気圧が低下するので、神経が入っていた空洞の中の気体が膨張して高圧になるので痛みが出るのです。ダイビングをした時に歯が痛い方も似たような歯をお持ちの事があります。

完璧な殺菌を行うために保険外の薬を併用する 3Di 根管治療をお勧めしました。ご主人様が英保歯科のお客様である事もあって、自由診療ではありますが、精密な治療をご希望なさいました。

3本の歯のうち、真ん中に写っているのが原因の歯です。左の小さな歯は過去に他の先生が根管治療をして下さっています。

i Mix とバイオセラミックスは保険が使えないので自由診療で顕微鏡を使った根管治療を行いました。レントゲンで白く写っているのは歯の神経が入っていた空間を密閉するのに使ったお薬です。

術後のレントゲン写真をお見せしたところ、「素人でもこの写真を見れば、ちゃんと治療して頂いた事がわかります。だって、美しいですから。」と言って下さいました。

機能美といいますか、ちゃんとした「型」には無駄のない「美」が伴ってくるのですね。

いつかはゼロに

残念な事に、今月はインプラントのオペが多いです。多いといっても3回だけですが。お三人共6番に1本だけ埋入という小さな手術です。手術の時間は長くありませんのでお客様の苦痛は少ないと思います。

ただ、手術までの下準備(術前計画)にはかなりの時間を費やしています(術前検査、診断用ワックスアップ、ステントの作成、CTの撮影、等々。ラボに籠ったり、パソコンの前に座り込んだりして色々な事をやります)。

術前に計画された位置にインプラントが埋入できました。(これは近年新しく開発されたインプラントなので、より一層の機能美が感じられます。マニアックな話でスミマセン。)

約15年前の英保歯科はドクターが3人もいる「大手歯科医院」でした。若い代診の先生に虫歯治療の患者さんをお任せして、自分はインプラントの手術を月に8回程度行っていました。

しかも一人の患者さんに複数のインプラントを埋入するような大きな手術が多かったのです。

その頃に学会発表などを積極的に行い、インプラント学会の専門医を取得しました。全く噛めない患者さんが何でも嚙めるようになるので、「インプラントは最高の治療方法だ」と感じていました。

私は、皆さんがが思っておられるほどの「ストイックな完璧主義者」ではなく普通の人間なのですが、常に上を向いて「もっともっともっと良くありたい」と思い続ける傾向は強いと思います。インプラントの大きな仕事しながらも、インプラントよりもっと優れた治療方法、究極の治療方法がないかを考え続けていました。「もっと簡単で、もっと素晴らしい結果が出る治療方法がないものか?」と。
ありましたよ。その治療方法は「予防歯科治療」だったのです

現在の英保歯科でのインプラントの位置付けは「残りの歯、周囲の歯を守る」ための戦略になっています。インプラントを使えば前後の歯を削らずに済みますし、周囲の歯の負担を減らす事ができます。英保歯科では予防歯科のためにインプラントを使うのです。

開業してから20年以上も経っているのに、「年間1000本の手術実績!」などと自院のインプラントの本数を自慢している歯科医院はダメな歯科医院です。だって、歯を残す努力や、お客様の歯を予防する努力が足らないから、そんなにたくさんのインプラントを使うようになるんでしょ?

英保歯科では年々インプラントの手術数が減っています。いつかは「年間0本の手術実績!」と自慢できるようになりたいですね。

茶色くなっていたら虫歯?

6歳の男の子のお母様「奥歯(乳歯)が茶色くなってしまったので、ひどくショックです。真ん中の子で油断したせいか、朝食後の歯ブラシをちゃんとしてあげていないのが原因だと思います。朝日幼稚園に通っています。」と涙ぐんでおられました。素晴らしいお母様ですね。この子は幸せです。
私「朝日幼稚園なら在園時の食生活はキッチリされているはずです。この歯は咬み合わせの面の溝が茶色くはなっていますが、予防歯科治療をきっちりお受けになっておられますし、今お伺いしたご家庭での食生活習慣では、虫歯になる事は非常に考えにくいので、経過観察をすれば心配ないと思いますよ。」と説明しました。
安心してもらえたようです。大丈夫ですよ。

我が家の話をしましょう。

私の長男の左下の乳歯の1本が生まれつき変で、まるで虫歯になっているように歯の一部が欠けた感じで生えて来ました。
そこに食べ物の色素が沈着するので、だんだん茶色くなってきて、パッと見た目が「虫歯?」という風になってきました。

彼はその後、神戸友の会幼児生活団という、幼稚園に相当する教育機関に通うようになりました。そこでは年に1回歯科健診がありました。予防歯科に熱心な女性の歯科医師がキッチリと健診して下さいました。
毎年毎年、その歯について「乳歯の虫歯が1本あります。早めに治療してもらって下さい。」との指摘を受けていました。歯が欠けて茶色くなっているのですから、「虫歯」という診断になるのでしょう。

子供の虫歯の原因は食生活習慣、食育にあります。歯磨きがメインではないんです。
妻とは「我が家では5歳まで砂糖甘い物を極限まで控えているので、欠けている歯であっても、絶対に虫歯になったりしないはず。このままフッ素などを応用して様子を見よう。」と、相談して決めました。

そして、この乳歯が無事抜けてしまうまで、何事も無く使う事ができました。削っていた方が問題が起こっていた可能性は多々あります。

英保歯科では「茶色いから。黒いから虫歯」ではなく、食生活習慣や、過去の経歴などを加味した時間軸で物事を考えるようにしています。

保険の白いかぶせの、その先は?

「白いかぶせが割れた」という事で、久しぶりにドクターのアポイントでお見えになった英保歯科のファミリーのお客様。
拝見すると以前かかっていた歯科院でやったもらった、保険の白いかぶせ(詰め物ではなく、クラウンという王冠状の形態のもの)が壊れた状況でした。

被せが割れたり外れたりする時には、急にポコッと取れるのではなく、内部の接着剤の一部が剥がれが徐々に進行して、最終的に外れてくるのです。つまり歯と冠の間にすき間ができて、そこに虫歯菌が侵入して虫歯になって外れてくるのです。上の写真で、外れた歯が茶色く虫歯になっているのがわかりますか?

金属の冠自由診療のジルコニアセラミックの冠保険の白い冠(CAD/CAM冠を含む)の順に歯を削る量が多くなります。横の健康な歯と比べて、「どれだけ削ってあるか」が分かりますよね?
自由診療では型を取る材料にシリコンなどを使うのでピッタリ合う冠を作る事ができます。単に冠の材質だけの違いではなく、自由診療は色々な事が「スペシャル」なのです。このお客様にはこれらの事を説明をして、この歯を自由診療のジルコニアセラミック(8万円税別)で修復させて頂く事となりました。

接着不良のプラスチックの土台と内部に入っていた金属ピンを30分以上かけて慎重に取り除きました。そして、虫歯になっていた部分を、う蝕検知液で何回も染めながら慎重に慎重に削っていきました。しかし、これでもまだ完全には悪い所を取り切っていません。ここからは英保歯科の腕の見せ所です。「まだ抜かないで。その歯は残せるかも知れません。」です。頑張ります。

保険でできる白い詰め物(コンポジットレジン)は、防湿さえきっちりやっていれば、全然悪くないのですが、保険でできる白いかぶせ(HJCや今話題のCAD/CAM冠)には、まだまだ問題が多いと思います。「安くて白い」ので受けが良いのですが、被せてから数年後から十数年後にはその歯自体が無くなっている可能性があります。保険の白い被せを(CAD/CAM冠を含む)を勧めて下さる歯科医師には、是非「先生の歯にもそれを使いますか?」と聞いてみて下さい。

そもそも、予防して虫歯にしていなければ、あなたがこのようなストーリに関わる必要はありません。予防歯科治療を受けて、なおかつ、子供は「5歳までだけは砂糖甘い物を徹底的に控える」事が、人生に歯の悩みを持ち込まない最短の方法なのです。

抜かなくて良かったね

前歯が根元からポッキリと折れてしまったお客様の歯をインプラントにせずに、根管治療と矯正と手術をして、抜かずに修復して5年が経過しました。
まだまだ油断はできませんが、一里塚は過ぎた感じで、これからもしっかりメインテナンスをして、まずは10年を目指したいと思います。

アクシデントでポキッと折れてしまった前歯。歯肉より下で折れてしまっているので修理ができそうにありません。どうしましょうか?抜いてブリッジかインプラントにするなら話は早いのですが、それでは英保歯科らしくないしね。

折れた部分を歯肉より上に出してくるために、スーパーボンドで折れた歯を仮に接着して、矯正装置(3万円)を取り付けました。

 

装置の位置で歯が上がって来ているのが分かりますね?そして、歯と共に歯肉と骨もついて上がってきています。矯正の期間は3か月程度です。

一緒に上がってきた組織(歯肉)を根の先の方に移動させて縫合(移植手術)をしました(1万円)。

最初の写真と比べてみて下さい。これならこの歯を残せそうです。

3Di根管治療(7万円)をしてグラスファイバーで土台を作りました。6か月程度は仮歯の状態で歯肉が治癒するのを待ちます。

ジルコニアセラミックのクラウン(10万円)をかぶせました。技工士の先生が上手なので隣の本物の歯と見分けがつかないでしょ?

あっという間に5年間が経過しました。年3回のメインテナンスに来て頂いていますので、現在の所、経過は良好ですね。

治療期間は1年弱、来院回数も20回以上になりました。費用も消費税別で21万円以上かかりました。でもインプラントの半額程度ですし、何より、かけがえのないご自身の歯を残す事ができました。お客様は本当に喜んで下さっています。
私も勇気を持って、頑張って頑張って、歯を残す治療をしましたよ。

5年経ってみて、慌ててインプラントにしなくて良かったなと、心から思っております。

10年経ちました


平成20年に All on 4 という方法(神経を避けてインプラントを故意に斜めに傾けて埋入し、4本のインプラントで12本から14本の歯を支える方法)で、下顎の総入れ歯を固定式の歯に替えたお客様。10年経って精密検査を行いましたが、問題なく経過しています。私もお客様も一安心です。

彼女「もう10年にもなるんですね。私の主人は食事の最中にしょっちゅう入れ歯を外しては掃除して、また戻して入れてはと、見ていてもとっても不便そうです。私はインプラントにしてもらったお陰で本当に快適です。10年前に投資したお金は価値があったと、心から思います。」との事。

私「有難うございます。○○様は本当に丁寧にブラッシングをして下さっていますし、年に3回のメインテナンスも欠かさず10年間来て頂いていますので、経過が良好なんですよ。」

この写真は衛生士の先生のプロケアーを受ける前の、来院時のお口の中の状態です。清掃が難しい構造なのですが、インプラントのシリンダーが銀色にキラッと光っている事からも、お家で時間をかけて丁寧に磨いて下さっている事がわかりますね。

お金も時間もかけてインプラントにして良かった点も多いのですが、もしも予防歯科治療で自分の歯が残せていたら、もっと清掃も簡単で、何もかもがもっと快適だっただろうと思うと、少々悔しい感じもします。

やっぱり、予防が一番簡単なんですよ。