「実際の治療例や関連情報」カテゴリーアーカイブ

Guided & Ti Ultra® & Cytrans®

私がお客様の歯を治療する時、ほとんどの場合はスタッフについてもらわずに一人で行っています。理由は2つあって、1つは「受付は英保歯科の中でも最も重要な仕事。スタッフのストレスを少しでも減らして受付業務に専念して欲しい」と思うため。2つ目は「一人きりで集中して治療がしたい」と思うためです。

しかしながら、そんな私でもインプラントの手術だけは一人では不可能です。先日の英保歯科でのインプラント手術には、院外のフリーランスの歯科衛生士の先生に「外科助手」として参加して頂きました。この歯科衛生士のK先生は外科の助手の訓練をキチッと受けておられるので、今回のように飛び入りで参加して頂いても完璧に手術が行えます。プロの仕事っていう感じでしょ?

プロの仕事といえば、英保歯科ではCTによる治療計画やシュミレーションに基づき3Dプリンタを用いて作成されるガイドシステムをベースに、そこに私の臨床経験から出来たスパイスとソースをサッサと降り掛けた「最新といぶし銀が共存する英保歯科らしい」オペを行っています。その一部を写真で紹介しますね。

他院で抜いてもらった左下の奥歯の所(黄矢印)。痩せてしまって骨幅が少ない(黄点線)ので、インプラントは簡単ではありません。
インプラントが入る場所を3次元的にガイドするマウスピース(緑色)を装着し、Ti Ultra インプラント(青い点線から先の部分)をガイドスリーブ(黄色)に正確に入れて行きます。
CCという最新の接合様式(青)を持った陽極酸化処理で金色に輝くTi Ultra インプラント(黄色)が寸分違わず計画した3次元的位置に収まりました。この後自家骨とサイトランスグラニュールという人工骨を露出したインプラント周囲(黄色)に移植し、サイトランスエラシールドという吸収性膜で被覆して手術を完了しました。

いかがでした? 今回のブログで、読者の皆様のインプラントに対する理解が少しでも深まれば幸いです。

【閲覧注意】歯を分割・回転・再植した結果・・・。

約1年前、英保歯科に初めて相談に来て下さったお客様の左下7番。「他院で『この歯は抜いてインプラントにするしかいない』と言われたのですが、何とか残す事はできませんか?」というご希望でした。

この歯、確かに普通は抜歯だよな。素人の皆さんが見てもそう思いませんか?
この歯は根っこが2本あります。特に後ろの根はボロボロで、その周囲の骨には炎症が起きています。
虫歯で歯肉の下まで溶けてしまっているよ(黄色)。とりあえず歯を中央で半分にカットして歯根を分割して・・・。
後ろの根っこは抜いて捨てる。手前の根っこは一旦抜いて、ぐるっと前後を入れ替えて再植する。そうしたら、抜いた穴にピッタリ収まらずに 2㎜ 程度浮き上がるので、歯肉の中の虫歯の部分が上に出てくる。我ながらCOOL!?
後ろの根っこを抜いた穴にはテルプラグというコラーゲンを入れました。手前の回転・再植した根っこは出て来ないように糸でホールドする。
その後、 i Mix で根管内を完全に殺菌して、ファイバーコアを立てた。
とりあえずは「歯を残して欲しい」というご希望に応える事ができました。

手術から1年後、骨の炎症も完全に消えたので、これをインプラントに置換するか、当面このまま保存してみるかという前向きなディスカッションをして「御自身のご希望がどこにあるかを考えてみて下さい。」とお願いしました。医療は最終的には本人の意思が最も尊重されるのです。

歯を残して欲しいというご希望にお応えする努力をしたため、こちらのお客様とのお互いの信頼関係は良好なはずです。インプラントに関する私の説明やご提案に対して心から 100% 信頼して(←これ大事)耳を傾けて頂く事ができました。

最初から「抜いてインプラントしかない」の一点張りとは大きな違いがあると思います。
微力ながら、こうやってコツコツと日本の歯科医療の信頼を回復するための努力をしています。だって、私は歯医者になるために産まれてきた人間ですから。

最近の保険の白いかぶせ(大臼歯のCAD/CAM冠)ってどうなの?

先日から英保歯科のファミリーになられたお客様。他院で3カ月前にやってもらった保険のCAD/CAM冠が外れたとの事で「どうしたら良いでしょうか?」と相談を受けました。

多くの歯科医院が「ついに厚生労働省が認可!奥歯にも保険で白い歯が出来ます!」と謳っている訳ですが・・・。
CAD/CAM冠といっても所詮はプラスチックです。冠が壊れないように厚みを充分に取ろうとして、大量に歯を削ったようです(黄色)。その結果、歯の高さが短くなっちゃいました(赤)。
CAD/CAM冠のプラスチックの強度を出すために、ぐるりも大量に歯が削ってあります。一部は歯が無くなって土台が露出してしまっています(黄色)。この歯って長持ちするのかな?
土台の内部が腐敗して悪臭がしてくるので、全て削り取って「一から」やり直しする事にしました。被せは自由診療のジルコニアを使う事になります。しかしながら、既に大量に削ってあるので私が思い描くような理想的なリカバリーは、もはや、不可能です・・・。

頑張って自由診療で再修復を試みる事にしました。でも、もしも長持ちしなければ抜歯してインプラントにしなければなりません。
保険のCAD/CAM冠って、どうなんでしょうね?
長い目で見たら、かえって高くつく治療かも知れませんね。

ナイトガード(マウスピース)を作る前に

夜寝ている間、無意識に歯ぎしりや食いしばりをしている人が非常に多く、歯を磨り減らしたり、時には破壊したりしてしまう事があります。骨が変形する事もあるんですよ。怖いね。

下顎の骨隆起の一例。歯ぎしりや食いしばりの力によって骨が変形(隆起)しています。貴方にはありませんか?

ストレスが原因の一つと言われており、このような方は、以前は中間管理職のような男性に多いように感じていたのですが、最近はむしろ(アラフォーの)女性にそのような傾向持つ方が(非常に)増えてきている印象を持っています。

母親の胸に抱かれ愛情に包まれて寝ている赤ちゃん(おさなご)は皆、歯を食いしばったりする事は無くスヤスヤと休んでいるはずで、眉間に皺を寄せてギシギシと歯ぎしりを赤ちゃんなんていませんね。安心し切って、ストレスゼロなんでしょうね。

ストレス・・・。

スマホをベッドに持ち込んで、つい俗世間の話題を見てしまい、心をかき乱されていませんか?
布団に入ってからブルーライトを見たり、心理に悪影響を与える情報に触れたり、睡眠中ずっと、頭のすぐ横に電磁波を発する機械を置いていたりしていませんか?
5G になったらますます強力な電磁波となるそうですし、企業や政府が発する「安全神話」を鵜呑みにしないで自己防衛する努力が必要かも知れません。

歯ぎしりに対するナイトガード(マウスピース)を作る前に、「まずはスマホの電源を切って机に置いてから布団に入ってみたら?」とアドバイスして差し上げたいですね。例えば、せめて夜9時以降はSNSやLINEから距離を置くようにすればマウスピースを作る必要が無くなるかも知れませんよ。

ブリッジの利点・欠点

歯を失った時には何らかの方法でそこに歯を入れるのが一般的です。方法としては、入れ歯、ブリッジ、そしてインプラントから選択するようになります。
入れ歯や銀歯のブリッジは保険が効くので安価です。それは利点ですね。

欠点について、当院で10年以上前に装着したブリッジの経過を例えにお話します。

6番という大臼歯を抜歯した後、そこに(義)歯を入れて欲しいとのご希望がありました。1本のインプラントを使うか、ブリッジにするか相談の結果、お客様はご自身の意思でブリッジを選択なさいました。

このブリッジは3本分の歯を前後の2本で支えるので、支えの歯の負担が1.5倍になります。

緑色の所の歯は抜いてしまってありません。前後の歯を支えにしてブリッジという義歯を入れて調子よく使って頂いていたのですが、ついに支えの歯の根が割れてしまいました(黄色で囲まれたところ)。


そして支えの歯は過去に神経を取ってしまっていたので、もろく割れやすくなっています。
その結果、装着したブリッジは10年以上良い感じで使えていたのですが、ついに歯根破折が起こって寿命が来てしまったのです。

黄色の点々で囲まれた部分が歯の根っこの外形。この歯は根っこが2本あります。赤い所は手前の方の根っこが割れてしまって、開いた口ばしのようになっている事を示しています。

この辺がブリッジという修復方法の、避け難い欠点なのです。後ろの支えの歯を抜いたら、ついに入れ歯か2本のインプラントで修復という事になります。悔しいけど、これが現実なのです。

やっぱり予防が一番ですね!

8番(親知らず)は7番を破壊する事がある(閲覧注意)

親知らずが生えようとする力は強大で、時に手前の歯の歯根や側面を破壊してでも生えようとします。今日はその実例をお見せします。

レントゲンで、8番(親知らず)が7番の背面に食い込んで、破壊しているように見えます。
黄色が8番の一部。赤は7番が欠けたようになっている部分です。
仕方が無いので8番(親知らず)ではなく、7番を抜きました。
抜いた7番の背面にはポッカリと大きな穴が・・・。

10代後半には親知らずの存在を確認し、必要に応じて抜いておかないとこのような事になりかねません。

まあ、この場合はしばらく経つと、残した8番が抜いた7番の位置の付近まで降りて来てくれます。なかなか完璧な場所には来ませんけどね。

今日は久々に歯医者のブログらしい内容だったな。やれば出来るでしょ?私にも、歯の話が。

う蝕検知液の使用はMUST!

私がお客様の虫歯の治療をさせて頂く時には、防湿装置と「う蝕検知液」を必ず使うようにしています。今日はう蝕検知液についてご紹介しますね。

保険の銀歯の下側の歯に穴があいてきています。
銀歯を外してみたところ。いつもの事なので別に驚きません。
7割方、悪いところを削りました。雑にやると神経(青矢印)に当たっちゃうので、この辺から「う蝕検知液」を使って慎重に削って行きます。
う蝕検知液という赤い液体を塗って洗い流したところ。このように虫歯菌に感染している部分が赤く染まります。う蝕検知液を使えば虫歯菌の取り残しが無くなるし、歯を削る量を最小限に抑える事ができます。
神経に当たらずに、虫歯菌に感染している部分を完全除去する事ができました。う蝕検知液って凄いでしょ?(白い丸は神経ギリギリの所。でも何とか神経は見えていません。寸止め成功です。)
詰め物のベース(基礎部分)を重合収縮の少ないコンポジットレジンで作りました。これから削って型を取り、セラミックオンレーというものを作って行きます。

こんな風にこだわってキチッと治療をすると、素人目から見ても、結果が良さそうに思うでしょ?

親知らずの移植症例(術前から生着まで)

1年前に行った移植症例の経過を一緒に見てみましょう。

再根管治療で一旦は治癒させた右下7番(赤)ですが、再度根尖病巣(黄)ができてしまい、抜歯止む無しと判断しました。
抜歯予定の7番(赤)の後ろの骨の中に親知らずが隠れている(黄)ので、7番を抜いた穴からこの親知らずを引き出して、7番の所に移植する(緑)事にしました。
移植して深めに挿入しました(緑)。
サイズや形の違う歯を移植した(緑)ので、歯の周囲に骨が無い空間があります(オレンジ)。
2週間後に歯の中央に小さな小さな穴(緑)を開けて iMix を挿入します。
3週間後にその穴をレジンで封鎖します(緑)。
術後約1年後。移植した親知らず(緑)ですが、元々そこにあった歯のように美しい状態ですね。
移植した歯はしっかりと骨に囲まれて安定しています(オレンジ)。根尖病巣もありません(青)。親知らずを抜いた所にも骨ができてきました(緑)。

どう思われますか?インプラントより良さそうでしょ?
とりあえずこれで一安心ですが、長期的に安定して使って頂く為には今後の経過観察と定期的に歯科衛生士の先生によるメインテナンスを受けて頂く事が必須となります。

歯肉の異常所見と急性白血病

こんな経験があります。
Aさん「口の中が腫れて1週間前に耳鼻科に行ったら『抗生剤を出すからそれで様子を見るように』と言われたのですが一向に良くならないので『ひょっとして歯周病?』と思って来させてもらいました。」
私:「どれどれ・・・。✖%△◎!! Aさん、すぐに紹介状を書きますから、今から○○病院に行って下さい。午後で受付が閉まっていても『英保歯科から緊急なので診てもらうように言われた』と言って受け付けてもらって下さい!」
Aさん「わかりました。」

本当はオレンジ色の線まで歯が見えているはず。歯がほとんど隠れるほど歯肉が腫れています。

○○病院からの返信では「ご指摘の通り、血液検査の結果、白血病と判断致します。血液内科のある△△大学病院に搬送します。」との事でした。

Aさんは普段から英保歯科に予防のために定期的に通院して下さっていたので、過去の口腔内写真や歯周病検査との比較でこのような正確な判断ができたのです。その様な過去の正常時のデータが無かったら、口腔内を見慣れている歯科医師の私でさえ先の耳鼻科の先生と同様の判断になっていたかも知れません。
かかりつけ歯科医を持って定期的に通院していると、思わぬ重病の発見に繋がる事さえあるのですよ。

ステルス虫歯を探知せよ!

定期的な予防治療に通院していると、虫歯の早期発見に繋がります。
お母様が毎日の仕上げ磨きの時に発見できないような「ステルス虫歯」であっても、歯科衛生士や歯科医師ならピピッと探知して発見しますよ。

お母様:「子供が時々右下の歯が変と言うのですが、虫歯は無いように思うし・・・。」
歯科衛生士:「このグレーがかっている部分の内部で虫歯が進行している可能性があります。歯科医師にチェックしてもらいますね。」
私:「虫歯ですね。次回治療をしますのでお家で良くお話してあげて下さい。『注射される』とか『ドリルで削られる』とか『痛いけどちょっと我慢したらすぐ済む』とかいったネガティブな言葉は絶対に使わないで下さい。ポジティブな内容の話をしておいて下さい。」

ステルス虫歯の実際と、その治療の手順を写真で説明しましょう。

グレーで囲まれた範囲の歯の色が何となく暗いのがわかりますか?
黄色の所には歯の溝があるのですが、そこから内部に虫歯菌が入ったのです。
開けてビックリ(我々には分かっているのでビックリしないのですが・・・。)!内部にはポッカリと大きな虫歯が出来ています(オレンジ矢印)。
小児であっても防湿装置ZOO(オレンジ矢印)を使用して、コンポジットレジンによる完璧な接着治療(緑矢印)を行いました。

ズキズキ痛み出してから慌てて手当たり次第歯医者に電話して見知らぬ歯医者に行って、怖がって泣き叫ぶ子供をスタッフ数人がかりで抑えつけ、注射して歯の神経を取る・・・・。←昭和スタイルですね。
このような事は、予防治療のために通院するのが常識の英保歯科ではあり得ません。それに、虫歯治療は私一人でやっているので、抑えつけるためのスタッフなんかいませんから・・・。

・・・悪しからず。