一人だけ良くてもダメ

「若い頃から歯が良くて、何十年も歯医者にかかった事が無い。今でも自分の歯が全部揃っているので、所属している(リタイヤした人の集まる)サークルで羨ましがられる。」

こんな風におっしゃる(自慢される)中高年のかたがたまにいらっしゃいます。生まれつき歯が強い(虫歯菌の産生する酸に耐えやすい)か、小さい頃の食生活習慣が良かったのだと思います。

それはそれで良い事なのですが、何十年も歯医者に行っていないので、たいがいは歯石だらけで、下の前歯がグラグラするなど、中等度以上の歯周病になっていることがほとんどです。
虫歯にならなくて、歯医者に縁が無さすぎるのも善し悪しですね。予防歯科の概念すら入手するチャンスを逸するのですから。

こちらのお客様には「それは良かったですね。」という事になるのですが、予防歯科医師の視点から見ると、むしろ歯の質が弱かったり、親の正しい予防歯科の知識が欠如していて虫歯になってしまう子供と大人を未然に救ってあげるようにできないものかと思います。

全員の病気を未然に防ぐ事を考えるのが公衆衛生であり医療です。

それから、歯が虫歯になってボロボロになって歯を失った大人は、基本的には子供の頃の食生活習慣(食育)と保護者や学校などの誤った予防歯科の考え方が原因であって、その人自身が悪いのではないのですから、歯がいい(と思い込んでいる人)も入れ歯などで苦しんでいる人に対して、「俺は歯がいいんだ!」と面と向かって自慢しないで下さい。

聞かされる方は、そんな事自慢されたって今さらどうしようもないのですから、可哀そうでしょ?